Timee Product Team Blog

タイミー開発者ブログ

新規事業にデータアナリストが伴走した半年間

はじめに

株式会社タイミーでデータアナリストをしている平野です。タイミーキャリアプラス(以下、タイキャリ)という新規事業に、リードDAとして半年あまり伴走してきました。

タイキャリは、タイミーのスキマバイトのデータを起点に、長期就業(正社員採用)を支援するサービスです。タイミーで得た就業実績・バッジを"職務経歴書"として活用できるのが特徴で、2024年2月に開始されています。

新規事業DAの面白さ

0→1のフェーズで、データと事業を一緒に育てていく感覚を味わえる仕事です。

  • 自分の分析が事業の意思決定に直結する瞬間が日常的にある
  • 事業責任者・GM・PdMと机を並べて、事業の方向づけにデータで参加できる
  • データ基盤・モニタリング・分析テーマをゼロから設計できる

この記事で書くこと

一方で、新規事業ならではの難しさもあり、半年の間に"知っていれば避けられた"失敗を数多く経験しました。同時に再現可能な"型"が存在するとも確信しています。

本記事では、私が踏んだ落とし穴とそこから抽出したアクションを時系列で整理します。これから新規事業に入るDAの参考になれば嬉しいです。


Part 1: 新規事業DA特有の3つの難しさ

💡 難しさはPart 2の予防アクション、Part 3の原則とセットで読むと"克服可能な型"として見えてきます。

私が実際に踏んだ落とし穴を3つ共有します。どれも新規事業DAが共通して直面しうる構造的な問題で、「誰かが悪い」ではなく、立ち上げ期に起きやすい"あるある"です。DA側がどう動くと摩擦や手戻りを減らせるか、という観点で整理します。

① 統制構造の有無で難易度が桁違いに変わる

  • DAへの依頼を集約する"要望窓口"(bizops的人材)がいるかどうかで、伴走の難易度が大きく変わります。立ち上げ初期は役割や導線が固まりきっていないため、集約は"自然発生"しないことも多いです。
  • 集約役がいる事業: 要望が一本化、定義の議論は1対1で済む
  • 窓口体制が立ち上がる前の事業: DA側が複数の現場と直接やり取りし、定義確認を個別に進める必要が出てくる

人材紹介領域はbizops担当の方がいてスムーズだった一方、DR領域では複数の現場と直接やり取りしながら同じ定義の議論を繰り返すことになりました。

② DA介入前にプロダクト開発が進んでしまう

プロダクト駆動型の新規事業では、スピード重視でDAが合流する前に実装が固まることが起きやすく、後から計測設計を整える負担が大きくなります。

DRサービスでは、私が伴走を始めた時点で、計測設計にDA観点を反映する場がない状態でした。一気通貫のファネル分析のため、計測設計の整理を提案するところから始める必要があったのです。

新規事業の速度感を考えれば自然なこと。だからこそDA側から早期に合流する関係性を作りに行くことが重要だと痛感しました。

③ DA側が組織横断の優先順位付けの場を提案できていない

立ち上げ期は、各担当者が自分の領域の進捗を重視するのは自然(むしろ健全)です。一方で、全体の優先順位を議論する場は用意されていないことも多く、DA側から立ち上げないと、横断の判断軸を持って動くのが難しくなると感じました。

私も最初の数ヶ月は会議体を提案できず、腰を据えるべきテーマに集中しきれない期間を過ごしました。


Part 2: 時系列アクションリスト

新規事業にDAが入るとき、いつ何をやるべきかを時系列で整理します。各アクションに「なぜそう思ったか」のエピソードを添えました。

🔵 Day 0: アサイン前の意思決定

アクション 内容と効くポイント
🧗 DAをディープダイブ(兼務させない) 新規事業は定義変更・指標追加が高頻度で、半コミットでは事業理解が追いつかない。特にリードアナリストは他案件と兼務させないことが、後の伴走の質を大きく左右する

💡 最初からディープダイブ前提でアサインされたことが、信頼関係構築 → 中長期伴走パートナー化につながりました。

🟢 Week 1-4: 関係性構築・PJ立ち上げ

🎯 特に効いた3つ: 関係者ヒアリング / 要望窓口の確認 / ログ設計レビュー合流(プロダクト駆動型)

アクション 内容と効くポイント
📋 関係者ヒアリング 事業責任者・GM・現場メンバーに事業の目的・課題・関心事をひとりひとり丁寧に聞く。この時間投資が後の伴走の土台になるため、急ぎたい気持ちを抑えても話を聴く価値がある
💬 依頼チャンネル合意 Slack・依頼フォーム等を事業側と合意して「どこに・どの形式で依頼を投げるか」を明確化。受け手のオペが回り、依頼の取りこぼしが減る
🔁 週次定例の継続参加 事業の解像度を大きく上げる手段。ただし参加だけでは何も変わらない。「この定例から何のアクションを生むか」を常に自問する姿勢が大事
🚪 要望窓口の確認/提案 集約役不在のままだとPart 1 ①の状況に陥りやすい。いない場合は、GMや事業部のミドルマネージャーに集約役を担ってもらう依頼導線の設計をDA側から提案
🔍 ログ設計レビュー合流 プロダクト仕様検討・ログ設計レビューの場にDAが入れるよう、開発開始前から合流しておく。これを逃すとPart 1 ②の罠にはまる
📚 ナレッジのGit管理 AIコーディングツール(Claude Code・Cursor・Devin等)が参照できる形でナレッジを蓄積。分析の壁打ち・クエリ作成の工数が劇的に削減されるため、アサイン初期の最優先投資

⚠️ 前任期に「定例参加だけでアクションに繋がらない」時期がありました。参加は手段、目的ではない。

🟡 Month 1-3: 目先の困りごと解決期(信頼残高を貯める)

🎯 特に効いた3つ: 爆速対応+問い返しの両立 / 要件定義を向き合いと一緒に言語化 / 基盤整備のタイミング評価

アクション 内容と効くポイント
⚡ 爆速対応 + 「なぜ/必要性/定義」の問い返し 初動の爆速対応は信頼関係構築の重要戦略。「このDAは価値がある」と認識されると、後のポジション変更が楽になる。ただし依頼対応に留まり続けると"依頼を捌く人"として固定されるため、「なぜやるか/本当に必要か/定義は適切か」を毎回問い返す姿勢を早期から取り入れる。信頼関係構築と「言うべきことを言う」は両立可能
✏️ 要件定義は向き合いと一緒にテキスト化 ダッシュボードやレポート作成の依頼時、「どの目的で、どの観点で、なぜ見るのか」を向き合いと一緒に書き残せるレベルで整理。これを省くと要件が固まる前に着手することになり、双方にとって手戻りが発生しやすい
🏗️ データ基盤整備のタイミングを常に評価 早すぎても空振り、遅すぎても移行コストが跳ね上がるのが基盤整備の難しさ。スプシ主体のモニタリングが積み上がってから着手すると、現行オペとの二重管理で身動きが取りにくくなる
🎁 外注保守カット案件は中長期運用主体を確認 「外注の保守費用削減のためにDA側で巻き取る」相談は、一度立ち止まって中長期の運用主体を一緒に確認したい類の案件。自分が異動・退職したときの移管コストが高く、長期の保守タスクとして残り続けやすい。特にdbt等が絡むものは要注意

💡 私はこの切り替えが遅れ、後から上流に意見を出し始めた際に向き合いとの期待値調整が必要になりました。

⚠️ 整備のタイミングをDA側から提案しきれず、暫定的な参照・運用が一部残っています。軽いうちに議論を持ち出すことが重要。

🟠 Month 3-6: 中長期伴走パートナーへのギアチェンジ

🎯 特に効いた3つ: 事業責任者+GM+bizops週次MTG立ち上げ / OKR策定シンクロ / 能動的価値発揮へシフト

アクション 内容と効くポイント
🗓️ 事業責任者+GM+bizops 週次MTG立ち上げ 組織全体で優先順位を棚卸しする会議体をDA側から提案して立ち上げると、横断の判断軸を持って動けるようになる。この会議体は、2事業目が入ったときの司令塔にもなる
🎯 OKR策定タイミングにシンクロ 期初のOKR策定に合流して、事業側と「何を課題と捉えるか」をすり合わせ。これをやると、その後の依頼について目的を事前にすり合わせた状態で動けるようになる
🔀 GM経由のコミュニケーションフロー 現場の複数メンバーからは似た観点の依頼がそれぞれ届くため、個別にすり合わせていると工数が膨らむ。GM(またはbizops・集約役)経由のフローに整えると、定義の議論が一つの場に集約され、双方のコミュニケーションコストが抑えられる
🎤 能動的価値発揮へシフト 受け身で依頼を捌くフェーズから、DA起点で価値を提案するフェーズへ。例: 現場担当者(CA等)へのインタビュー設計で定性課題を抽出 / 事業責任者・GMが意思決定に使う経営ダッシュボードをDA起点で設計・提案

💡 ここからが新規事業DAの本領発揮ゾーン。事業の意思決定に直接関われるようになり、自分の分析・提案が事業の方向づけにつながる手触り感を強く感じられます。

🔴 2事業目が追加されるタイミング

🎯 特に効いた3つ: 熱量シグナル検知→能動介入 / ログ設計レビュー最優先 / 要望窓口の最初からの設計

アクション 内容と効くポイント
🌡️ 熱量シグナル検知 → 能動介入 新しい領域が熱を帯びる瞬間(目標変更・予算変更等)をDAが能動的にキャッチして動くことが重要。待っていると後手に回り、Part 1 ②の罠(介入前に実装が固まる)にはまる
🔍 ログ設計レビューを最優先 プロダクト駆動型事業なら必須。Part 1 ②を2度繰り返さないためにも、最初期から計測設計のレビューに入る関係性を作りに行く
🚪 要望窓口の体制を最初から設計 1事業目の学び(GM経由フロー)を即座に転用。人材紹介領域で「GM経由フロー」が効くと学んだので、DR領域では初期から意識的にGM経由フローを設計した
🗓️ 横断の優先順位会議体を再設計 2つ目以降の事業が入るタイミングを会議体再設計のトリガーにする。1事業目向けの会議体を拡張して、横断優先順位を扱える形に変えていく

💡 DR領域で目標が跳ね上がる動きを検知し、自分から事業責任者+PdMに働きかけて週次定例への参加を勝ち取りました。これがなければ今の伴走体制は立ち上がっていません。


Part 3: 全体を貫く2つの原則

これまでの話は2つの原則に集約できます。

原則① 未来を見据えた動きをせよ

「今が楽に回るから」で意思決定しない。 半年後のオペレーション・組織・関係性を想像して、初動で先手を打ちます。

  • データ基盤整備のタイミングを早めに見定める
  • 初期から事業責任者との接点を作る
  • KPIや優先順位の構造を、組織が大きくなる前に整理する
  • 「目先の困りごと解決 → 中長期伴走パートナー」の移行を意図的にデザインする

新規事業は成長スピードが速く、"今困っていないこと"が半年後に大きなコストとして返ってくることが頻繁に起きます。

原則② 統制構造(要望窓口)を早期に組め

現場にbizops相当の集約役がいるかで、新規事業DAの難易度は桁違いに変わります。 いなければDA側から「誰が集約役を担うか」を提案するのが、DAの重要な仕事です。

統制構造が組めると、依頼フロー・優先順位付け・コミュニケーション工数のすべてが好転。逆にここが組めないと、どんなに優秀なDAでも個別対応だけで手が回りきらなくなります。


おわりに

落とし穴を中心に書きましたが、新規事業のDA伴走は半年経った今、自分のキャリアで最も学びと手触り感のあるフェーズだと感じています。「新規事業DA、ちょっと面白そう」と感じてもらえたら本望です。

最後に改めて、本記事の失敗エピソードはすべて、私自身(DA)の動きで改善できる余地について書いたものであり、事業側の皆さんを批判する意図はありません。急成長する新規事業の中で常に最善を尽くしてくださっているCareer Plus部の皆さんと、前任のDA・bizopsの方々に深く感謝しています。

この役回りに関する再現可能なノウハウはまだ少ない領域です。多くのDAが同じ試行錯誤を繰り返している現状が変わるきっかけになれば嬉しいです。

最後に、タイミーでは一緒に働くメンバーを募集してます!ご興味があればぜひお話しましょう!

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