Timee Product Team Blog

タイミー開発者ブログ

“You’re Not an Android Developer Anymore” ── droidcon NYC 2025現地レポ

こんにちは!タイミーでAndroidを主軸にしながらプロダクトエンジニアをしている中川です。

6月25, 26日の2日間、ニューヨークのブルックリンで開催された droidcon 2025 NYCに参加してきました。

今回の参加には、個人的に強い動機がありました。

30歳になる節目に、日本だけでなく世界で自分がエンジニアとしてどの位置にいるのかを確かめたかったのです。

今回このような貴重な機会をいただけたのは、日頃から支えてくださっている社内の関係者の皆さまのご理解とご支援、そして不在の間、現場を支えてくれたチームメンバーのおかげです。心より感謝しています。

タイミーには、世界中で開催されているすべての技術カンファレンスに無制限で参加できる「Kaigi Pass」という制度があり、今回はこの制度を利用してカンファレンスに参加しました。詳しくは以下をご覧ください。

productpr.timee.co.jp

私自身も、入社する前にタイミーのエンジニア組織について調べており、2023年にも現在の同僚がdroidcon San Franciscoに参加した記事を読み、これらのエンジニアの成長を強く後押ししてくれる制度に魅力を感じ、実際に入社を決める一つの大きな要因となりました。

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今回のdroidcon 2025 NYCはニューヨークのBrooklyn Storehouseで開催されました。会場はStorehouseという名の通り倉庫の形をしており、およそ10,000㎡の広大なスペースでセッションごとに仕切りを設けずに開催されました。

カンファレンス会場には高さ5メートルほどの巨大なドロイドくんが設置されており、初めての人でも「ここが droidcon だ」と感じさせてくれる象徴的な存在でした。

しかし、それ以上に存在感を放っていた“見えない”がいました──それは AIとレイオフ です。

You’re Not an Android Developer Anymore (Keynote)

  • Stacy Devino

全米のみならず世界中からAndroidエンジニアが集まるカンファレンスの初っ端から、いきなり核心を突くタイトルが登場しました。"こういうの待ってたぜ…USA…" とタイトルを見た時から感じていました。

今、アメリカには大きなレイオフの波が来ており、実際にレイオフをされて仕事を探している人が周りにいるかという質問に対し約7割の人が挙手しており、アメリカのIT業界の現状を肌で感じる機会になりました。

セッションではStacyが長年にわたり、さまざまな企業で Android エンジニアとして活躍してきた経験をもとに、これからの時代に生き残るための戦略を語りました。

AIの進化によって、プロダクトマネージャーやデザイナーなどのエンジニア以外の職種でもある程度の機能を作れる環境になってきています。

そして今後、モデルが進化したら誰でもソフトウェアを作れる時代が来るかもしれない──その中で、Androidエンジニア、ソフトウェアエンジニアはどうあるべきか?を問いかけるセッションでした。

セッションの中で語られていた

  • 問題解決にフォーカスすること
  • 自分の専門領域にとらわれず越境をすること
  • 小さな職能横断チームでゴールに向かって動くこと

これらはまさに、タイミーにおけるSAチームのプロダクトエンジニアのスタイルと強く重なる部分で、聴いていて非常に共感しました。

docs.google.com

"Ask Android" Office Hours

  • Google's Android DevRel team

さまざまなセッションの裏で自由にGoogleのAndroid DevRel teamのメンバーになんでも質問をすることができる"Ask Android"にも参加をしました。この会は特にファシリテーターやルールなどはなく、その場にいるGoogleのAndroid DevRel teamのメンバーを捕まえていろんな質問をぶつけることができました。

実際にComposeに注力をしているAlexに話を聞く機会があり、Edge to edge対応やLarge Screen Device, Material Designについてさまざまな話(ここには書けない裏話も含めて)を聞くことができ、貴重な時間になりました。

彼らのようなライブラリを提供する側からすると、逆にアプリケーションを開発するエンジニアがどんなことを考えながらアプリを作っているかに興味があり、お互いに情報交換をする機会にもなりました。

AlexはHandling configuration changes in Composeというタイトルで2日目のセッションにも登壇をしており、この"Ask Android" Office Hoursをきっかけに彼のセッションを聴講したのですが、なんとComposeの動作に関する例で実際にUIがスライド内で動作しており、これはもしや…と思いながら最後まで聞いていると、やはりスライド自体もComposeでできており、Composeを提供している側ならではの、圧倒的な熱量に驚かされました。

https://alex.vanyo.dev/talks/configurationchanges/

Career Office Hours with Stacy Devino

先述したStacyと参加者が円になって座り、キャリアの相談をする会でした。このセッションにはスライドやアジェンダもなく録画もされません。純粋にそれぞれのキャリアの相談をStacyと一緒に考える会でした。

相談の内容はレイオフの波もあり、かなり深刻なものが多かったです。個々人の話であるのであまり詳細には触れないのですが

  • 実際にレイオフにあった
  • マネージャーからICに戻ることに対する葛藤
  • Native/Flutter/React Nativeなどさまざまなモバイル開発手法に手を出したがどれも深掘りできておらず自信を持てずに悩んでいる
  • 大学でCSを学んだが入学時と卒業時でマーケットが激変していて就職に苦しんでいる

など聞いていて胸が苦しくなるような話題が多くありました。そのような困難な相談に対してもStacyの持ち前のポジティブさと、これまでの経験に基づく的確なアドバイスによって40分間のセッションでしたが、参加者はセッション後には前よりは明るい顔になっていくのをその場で感じました。

なぜ「現地に行く」ことが大きな意味を持つのか?

この記事の執筆時点では公開されていませんが、今回のdroidconの動画は例年通りであればインターネット上に公開されます。しかしながら実際に足を運ばなければ得られない体験をたくさん経験することができました。

カンファレンスはセッションを聞くだけの場所ではなくコミュニティが存在する場所である

動画が後からアップロードされるカンファレンスでも現地でしか得られない体験が多く存在し、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 現地での出会いをきっかけに、実際に仕事が決まることもある
  • セッション外でスピーカーにさまざまな質問をぶつけることができる
  • 朝早く会場に入ってStacyのような有名なエンジニアを見つけて会場で朝食を食べながら話をすることができる
    • 有名な人を捕まえると自然と人が集まってきて、さまざまな議論が始まったりする
  • セッション後にスピーカーにセッションに関連することも、それ以外の気になることも質問することができる
  • Androidという共通の話題をベースにキャリアだけでなくプライベートについても話をすることができる
  • Jake Whartonと話をして記念写真を撮ることができる

世界中のエンジニアが集まる場で感じたこと

  • 世界と比べても、タイミーのエンジニアたちは十分に戦えていると感じました
  • 有名OSSやJetpackライブラリの開発者など、世界的に活躍しているエンジニアたちは、やはり圧倒的でした jakewharton.com
  • すべてのセッションが上記のJakeのセッションのようなAdvancedな内容ではなく、自分がある程度知っている内容のセッションも一定数あり、自分もいつか、この舞台に立てるかもしれないという希望を持てました

雇用について改めて考え直すきっかけに

今回のカンファレンスを通じて、自分自身のキャリアだけでなく、「雇用」そのものについても考え直す機会になりました。

アメリカの大規模なレイオフの波を目の当たりにし、これまで安定だと思っていた“正社員”という立場も、企業の方針や市況の影響を受けて簡単に変わりうる現実を実感しました。一方で、個人として武器を持ち、どこにいても価値を発揮できる状態でいることの重要性も強く感じました。

タイミーという「働き方」に向き合っている会社で働く自分が、“雇用とは何か”をアメリカの現地で問い直すというのは、とても象徴的な体験だったように思います。

おまけ

時差ボケを考慮してスケジュールを組ませていただき、カンファレンスのない日は、せっかくニューヨークまで行ったので、観光を楽しむこともできました(もちろん仕事もちゃんとしていました)。

ナイトミュージアムの舞台になったアメリカ自然史博物館

ブロードウェイにてマイケルジャクソンの半生をミュージカルにしたMJ the Musical