Timee Product Team Blog

タイミー開発者ブログ

開発生産性Conference2025に参加してきました!

こんにちは!タイミーでBackend Engineerをしている@akitoshigaです!
7月3日(木)、7月4日(金)に東京の丸の内で開催された「開発生産性Conference2025」に参加してきました!🙌

dev-productivity-con.findy-code.io

自身は7月3日(木)のDay1に現地参加したので、その時の様子を振り返ってみたいと思います!

当日の様子

関西在住の自分は「Kaigi Pass」という社内制度を利用して参加しました。
「Kaigi Pass」とは、世界中で開催されているすべての技術カンファレンスに無制限で参加できる制度です。 productpr.timee.co.jp

会場はJPタワーホール&カンファレンスという東京駅近くにある会場で行われました。

最初のセッションで基調講演を行ったのはケント・ベック氏でした。
彼のファンである自身は今回聴講できて感無量でした。

その後のサイン会でケント・ベック氏にサインをもらいました!

サイン会の場で彼に対する想いと感謝を直接伝えることができて嬉しかったです。

サイン会の後、スポンサーブースを回ってみたのですが、非常に盛況でした。
ブースもたくさんありましたが、それ以上に参加者の多さに圧倒されました。

タイミーのブースもこんな感じで出展していました!

また、タイミーからはプラットフォームエンジニアリング部部長の恩田が登壇しました。

参加したセッション

自身が参加したセッションについてもいくつか紹介をしたいと思います。

基調講演:開発生産性測定のトレードオフ 「グッドハートの法則」はもっと悲観的に捉えるべきだった

  • ケント・ベック氏

冒頭で「物事をより良くしようとしてかえって結果が悪くなってしまう」という旨のドイツのことわざを紹介しており、要所要所でこちらに言及しているのが印象的でした。

「グッドハートの法則」とは「指標が目的になった途端それは良い指標ではなくなる」ことを言うそうで、これを提唱した英国の経済学者の名前にちなんで名付けられたそうです。
生産性向上のために指標を設け測定したとしても、開発者にプレッシャーをかけるとその指標を達成することが目的になってしまうと主張していました。
タイトルに「もっと悲観的に捉えるべきだった」とありますが、このような指標の目的化現象は我々の想像以上に起こりやすく、またいろいろなところでそのような場面にケント・ベックは直面していたようです。
実際にこのような事態は誰しもが一度は経験があるのではないでしょうか。
このことについて、開発者にはプレッシャーをかけるのではなく目的意識を共有することが重要だと主張されていました。

また、測定すること自体は良いが、決して目標にしてはならず測定のポイントにも注意が必要だと主張していました。
ケント・ベック氏は「Path of Value」として以下の4つのプロセスを紹介しました

  1. Effort
    • コードを書くこと
  2. Output
    • 具体的な成果物(画面上のボタンなど)
  3. Outcome
    • ユーザーの価値変容
  4. Impact
    • ユーザーの行動変容

1から4に行くほど測定はしづらいが、ユーザーの価値につながるため、測定の判断は先送りにしてなるべく後ろのプロセスで測定することを推奨していました。

最後にグッドハートの法則に対応する形で以下を結論づけました。

  • Observe later(計測はなるべく遅らせ後ろの段階で行う)
  • Encourage awareness(気づきを奨励する)
  • Avoid pressure(プレッシャーをかけること避ける)
  • Instill purpose(目的意識を共有する)

「グッドハートの法則」に基づくケント・ベック氏の主張は、ある種当然と言えば当然のようにも思われるのですが、彼がこの主張をすることにものすごく意味があると感じました。
開発プロセスにおける本質的な部分をテーマにした彼らしい発表だと感じました!

NTTデータによる生成AI活用:開発効率化とビジネス変革

  • 株式会社NTTデータグループ 海浦 隆一氏

NTTデータは2025年7月にApps&Data技術部からAI技術部へと組織改編して生成AIの活用を本格的に推進しており、これまでのミッションクリティカルなシステム構築で培った生産性向上ノウハウを基盤に、開発スピード向上と品質維持の両立を目指しているそうです。
取り組みのロードマップとしては自動化の段階的推進: 2023年のタスク自動化から始まり、2025年にはプロセス自動化、2027年にはビジネス全体の自動化を目指しており、既に250以上のプロジェクトでAIを活用しているとのことでした。

主な取り組みと成果として以下について紹介していました(一部)

  • モダナイゼーションとレガシーシステムの解明
    • FigmaからのReactコード生成(Locofy)
    • ソースコードからの開発ドキュメントのリバースエンジニアリング
    • OSSからのマニュアル生成などにより、システムの理解と保守にかかる工数を削減
  • 属人化防止とドキュメント作成の効率化
    • 有識者の暗黙知を形式知化し、独自様式の設計書を標準形式に変換する「Coding by NTT DATA」の活用
    • ExcelからMarkdownへの変換など、AIが読み取りやすいフォーマットを採用
  • 開発プロセスの各段階でのAI活用
    • GitHub CopilotやAzure OpenAIを利用
    • 設計書からの結合テスト項目を作成

さらなる生産性向上への展望として開発工程全体の生産性向上を目指し、要求分析から直接コードを生成し、その後設計書をリバースエンジニアリングする「逆Wモデル」といった新しい開発プロセスの実現を模索していることが非常に印象的でした。
全体的にAIを中心に据えて最大限AIの恩恵を受けられるように開発プロセスを設計しているように見受けられ興味深かったです。
また、多種多様なプロジェクトに携わっている強みを活かしてシステム開発における全域に渡って実践・フィードバック・形式知化・横展開を行えているのが組織として非常に魅力的に感じました!

生成AI時代の品質保証:自動化とAIによるテスト改善

speakerdeck.com

  • mabl株式会社 小田 祥平氏

現状を取り巻くQAの問題点と、そのソリューションとしてAIエージェントによる自律型テストを紹介されていました。
QAに関して課題を抱えているところは多いそうで、独自アンケートによると対象者の6割が手動でのテスト対応を行っているとのことでした。
この背景には以下の問題があるそうです。

  • 保守コスト
  • 基盤の構築と実施コスト
  • ナレッジ不足

特にAIの台頭によりデプロイ頻度の増加と品質維持の要求が高まる中で、テストの自動化とAIの活用が不可欠であるということを強調されていました。

これらの課題のソリューションとしてAIを活用したテストマネージドツールの提案をされており、「mabl」というサービスをベースとして以下のようなテストマネージドツールの機能について紹介されていました。

  • マネージドツールの活用
    • 生成AIによるテスト自動修復機能でメンテナンスコストを削減
  • AIによるデータ分析・推論
    • テストログからの原因分析、flakyテストへの対応
  • 自然言語でのテスト構築
    • ユーザーストーリーからテストケースを自動生成
  • CI/CD環境との統合
    • シームレスなテストプロセスを実現

AIを活用したテストツールはこれまで詳しく追っていなかったので想像以上の多機能・高機能さに驚きました!
開発速度の向上に伴い迅速なQAは今後より求められていくので、こういったツールが不可欠になっていきそうだと感じました。

楽天のAI戦略:70以上のサービス運営と開発生産性向上

  • 楽天グループ株式会社 久田 直次郎氏

楽天グループの展開する70以上サービスの中で、AIを事業成長と開発生産性向上の両輪として活用している現状を紹介されていました。
楽天グループのAI推進戦略として「トリプル20」を打ち出しています。
この戦略はAIを活用してマーケティング・オペレーション・カスタマーサポートの利益をそれぞれ20%向上させることで、年間105億円の利益貢献を目標としています。
社内でのAI活用は非常に効果が出ているそうで、既に16,000個以上のAIツール・テンプレートが作成され、営業資料の作成時間は48%減、ビジネスメール作成時間54%減などの効果が出ているとのことでした。

また、新たな事業として「Rakuten AI for Business」を開始しており一般ユーザー向けに事務・営業・企画/マーケティング・エンジニア向けサービスを提供しているそうです。
それだけでなく、「Rakuten AI LLM」という自社LLMの開発も行っており、用途に合わせた最適化・日本企業に合わせた設計・日本語性能の高さを強みとしているそうです

開発におけるAI活用ではコーディングが最も多く、GitHub Copilotなどの生成AIコーディングツールの導入PoCで一定の効果を確認しているとのこと。
開発サイクルタイムのデータ収集と標準的な可視化を進めており、30%~80%の開発効率削減を目指しているそうです。

楽天グループには約30,000人の従業員の方がいるそうで、AIによる業務効率化のインパクトは非常に大きいと思いました。
また、自社で日本語性能を強みにしたLLMを開発されているのが非常に興味深く、どういったところで活用されていくのかについても興味が湧きました。

まとめ

開発生産性Conferenceには今回初めて参加したのですが、各社の開発生産性に対する様々な取り組みや参加者の熱量を感じました。
今回参加して得た知見を自身や周りの開発にも活かし、より生産的なプロダクト開発を行ってまいります!

お知らせ

開発生産性Conference2025でタイミーと同じく登壇されたログラスさん、DELTAさんと合同で「生産性改善しNight」と題したアフターイベントを開催します!
「開発生産性 Conference 2025」に参加された方はもちろん、開発生産性の向上や、社外のエンジニアとの交流に興味がある方も大歓迎ですのでぜひ遊びに来てください! timeedev.connpass.com