
この記事はTimee Product Advent Calendar 2025の18日目の記事です。
評価業務、面倒ですよね
社会人になってから、特に苦手になった言葉があります。 「個人目標」「評価」の2つです。
「自己評価」「振り返り」など会社によって呼び名は違えど、自身の四半期〜1年程度の期間に実施した業務や成果を上司に報告する機会は、正社員として働いている方にはほぼ必ず巡ってくることと思います。 私も例に漏れず、少なくとも15年以上は評価されたり評価したりしながら過ごしてきました。とはいえ、被評価者のキャリアアップなど目的は会社のためだけでは無いことは理解しつつ、評価期間に費やす時間・マインドシェアを削減して顧客への価値提供に投下するリソースを最大化する術が無いか、というテーマについて日々思考しています。
そんな中でやってきたのが、AI・LLMの波です。評価業務に割くリソースを最適化するチャンスと見て、私は飛びつきました。
というわけで、手探りで実施した自己評価業務におけるAI活用事例を紹介します。
自己評価におけるAIの使いどころ
GeminiやChatGPTのようなAIは「私の四半期分の自己評価をまとめたドキュメントを作って」とプロンプトで依頼すれば、過去に自分が彼らに相談した内容からそれっぽいものを作ってくれます。ただ、実際の自身の活動をまとめる上では与えている情報量が足りないので、もっともらしい誤りの内容が出力されてしまうんですよね。
そこで、いかに私の情報をAIにたくさん与えるか、という観点で考えるアプローチにしています。情報源は自らがActionとしてたくさん書き出しておき、それらを会社制度に合わせた観点でまとめてスコア付けをする箇所をAIに任せる形です。
先に言っておくと、このアプローチにかかる労力は決して軽くはありません…。ただし、精神的な負担はかなり軽減された、と私は感じています。
実施手順
以下は2025年10月時点で自己評価をする必要がある組織を想定して記載しています。 AIはCursorというツールでSonnet 4.5(2025年10月時点)を利用して実施しましたが、ローカルにあるファイルを参照できるツールであれば他のツールでも応用可能だと思います。
自己評価の準備手順
自己評価用のディレクトリを作成(1分)
任意のディレクトリに作業用のディレクトリを作成(
~/Documents/workspace/cursorなど)し、その直下に「202510_自己評価」というディレクトリを作成評価に関係する社内ルールをMarkdown形式で書き出す(10分)
- 「キャリアラダー」ディレクトリ
- 社員が属するグレードごとに求められる要件をまとめた資料
- 全グレード分用意
- 面倒な場合は自分のグレード±1グレード分だけで良いかも
- バリュー.md

※2025年11月にバリューが更新されたため、現在のバリューとは異なっています - 2025年10月時点の弊社のバリューは上記の4つ
- バリューのタイトルだけでなく、その詳細もセットで書いておく
- 「キャリアラダー」ディレクトリ
- 個人目標ディレクトリを作成(1分)
- OKR_FY2025_2ndHalfディレクトリに、今期用のOKR目標2つ分のMarkdownを保存
- 弊社は「期待役割」という名称でも別の目標管理が実施されているため、期待役割_FY2025_2ndHalfディレクトリに今期用の期待役割3つ分のMarkdownを保存
日常的にアクションを書き溜めるためのディレクトリを作成(1分)
「Actions_FY2025_2ndHalf」ディレクトリを作成しました。
自己評価用ディレクトリのルート階層に、サブディレクトリごとの説明を書いたREADME.mdファイルを作成(15分)
上記1.で作成した作業用のディレクトリに内包しているディレクトリ・ファイルの説明用のMarkdownを「README.md」というファイル名で作成しました。
このディレクトリに含まれるファイルの概要は以下の通りです。 ## Actions_FY2025_2ndHalf FY2025下半期に実行した主たるアクションが一つ一つファイル化されているディレクトリ。 ## キャリアラダー 私が所属する企業であるタイミーの評価制度に用いられる、各グレードに期待される働きの定義群がまとまっているディレクトリ。 ## バリュー.md 私が所属する企業であるタイミーにおいて行動の基準となるバリューの定義。 ## 期待役割_FY2025_2ndHalf FY2025下半期の自身のグレードや職能を踏まえて自身に期待されるであろう役割を自ら想定した内容が記載されているファイルをまとめたディレクトリ。 期待役割は◯◯、◯◯、…のn軸から選択でき、その詳細は上記「キャリアラダー」ディレクトリに含まれるファイルにグレード毎に定義されている。 ## OKR_FY2025_2ndHalf FY2025下半期の目標として定めて取り組むOKR目標とその結果をまとめるディレクトリ。日常的にアクションを書き溜める
評価対象期間(弊社の場合は3ヶ月)ずっと書き足していく必要があります。 1クォーターあたりだいたい10アクション程度の量感を目指して書いています。
個人目標に進捗があり次第、上記2.で書き出した個人目標のMarkdownファイルを更新
上記の手順をすべて実施すると、以下のようなディレクトリ構造が出来上がります。
202510_自己評価/
├── README.md
├── Actions_FY2025_2ndHalf/
│ ├── アクション1.md
│ ├── アクション2.md
│ ├── アクション3.md
│ └── ...
├── キャリアラダー/
│ ├── グレード1.md
│ ├── グレード2.md
│ ├── グレード3.md
│ ├── グレード4.md
│ ├── グレード5.md
│ └── ...
├── バリュー.md
├── 期待役割_FY2025_2ndHalf/
│ ├── 期待役割1.md
│ ├── 期待役割2.md
│ └── 期待役割3.md
└── OKR_FY2025_2ndHalf/
├── OKR1.md
├── OKR2.md
└── OKR3.md
自己評価をまとめる手順
- 「202510_自己評価」ディレクトリにself-assessment.mdを作成
self-assessment.mdに以下の情報を記入
# 前提 私のグレードは以下のとおりです。 - Grade: ◯◯ - Rank: ◯◯ # 自己評価スコア > Self assessment of Abilityは、以下の7項目から選択して採点して下さい。 > 期待通りが4で、それを軸に期待を上回ったか、下回ったを総合的に判断して下さい。 > > - 7. Extremely exceeds expectations > - 6. Greatly exceeds expectations > - 5. Exceeds expectations > - 4. Meets expectations > - 3. Less than expectations > - 2. Greatly less than expectations > - 1. Extremely less than expectations > > Self assessment of Valueは、以下の5項目から選択して採点して下さい。 > 期待通りが3で、それを軸に期待を上回ったか、下回ったを総合的に判断して下さい。 > > - 5. Greatly exceeds standard > - 4. Exceeds standard > - 3. standard > - 2. Less than standard > - 1. Greatly less than standard ## Self assessment of Ability **## Self assessment of Value(理想ファースト) ## Self assessment of Value(やっていき) ## Self assessment of Value(バトンツナギ) ## Self assessment of Value(オールスクラム) # 上記のスコアを付けた理由の深堀り ## 自己評価の背景 ## 自身の振り返り ### 期待役割に対する振り返り ### OKRに対する振り返り ### 総合的な振り返り**Cursorにself-assessment.mdを執筆するよう指示する
私はiOSアプリエンジニアをしています。 この会社の評価制度の中で、現在は自己評価期間となっています。2025年5月から2025年10月までの間に実施した業務と、期首に設定したOKRや期待役割の定義、更にキャリアラダーに基づいて、自己評価をself-assesment.mdファイルにまとめようとしているところです。 202510_自己評価ディレクトリのファイルを網羅的に参照して、私の自己評価業務を手伝うべく、このself-assessment.mdファイルの内容を埋めて下さい。 202510_自己評価ディレクトリに保存されているファイル群の概要は、202510_自己評価/README.mdにまとめてあります。記入された自己評価をレビューし、違和感がある箇所を後続のプロンプトで手直しさせる
初回は自身の直感と異なるスコア付けがされていたので、こんなプロンプトで調整を加えていきました。
嬉しいんですが、本当にそうですか?さすがにほとんどの項目が最高評価だと、ちょっと疑わしいと感じてしまいます。もっと厳しい目線も加えてもらえませんか?今のSelf assessment of Abilitのスコアは◯◯ですが、このスコアを+1するとしたらどんな懸念がありますか?会社が用意した壁打ち用のAIにself-assessment.mdをレビューしてもらい、受けたフィードバックのうち妥当だと感じるものをCursorにプロンプト経由でフィードバックする
会社が用意した壁打ち用の生成AIに現状のself-assessment.mdをレビューしてもらいました。 以下のフィードバックを取り入れたいと思っています。 (以下、壁打ちAIのフィードバックのうち自身が共感した内容をコピー&ペースト)以降、Cursorが手直ししたself-assessment.mdと壁打ち用AIの間を気が済むまで往復する
今期の自己評価のために用意したファイル群は、来期の目標設定でも役立つ
自己評価が終わるとすぐに待っているのが、目標設定業務です。
前期の評価に対して上司からもらったフィードバックを202510_自己評価/self-assessment.md に記入しておくと、目標設定業務でそれが大いに役立つことになります。
具体的には、202604_自己評価ディレクトリを作って202510_自己評価と同様のディレクトリ構成を完成させた上で、以下のようなプロンプトでCursorに相談して目標設定を進めました。
@202510_自己評価/self-assessment.md ここに前期の自己評価と、私の上長から頂いたフィードバックが記載されています。 この内容を基に、202604_自己評価ディレクトリにOKRと期待役割を記入したいです。 どのように進めるのが良いでしょうか?
目標設定については詳細を省きますが、AIが目標設定の進め方を作業レベルまで落とし込んだり、OKR・期待役割のdraft版を提案してくれたりしたので、それらをレビューして調整を繰り返す形で目標設定を終えることができました。
感想
事前準備が全手動なので、トータルの労力としてはそれほどラクではありません。しかし、その事前準備で一番労力のかかる“日常的なアクションの記録”は、例えAIを活用しない場合であっても有効な手段ですし、実際に私は評価業務にAIを活用する前から実施していたことなので、AIを使うために大変になったわけではありません。
そして前述の通り、評価業務に挑む気持ちの面ではかなりラクになったと感じています。人間は事実を記録することに専念して、その事実が会社のキャリアラダーやバリューに沿っているかを客観的に評価する仕事をAIに任せたことで、評価業務においてクリエイティブな領域の多くをAIに頼れたからです。「やれば終わる」という作業的な仕事なら見積もり・見通しも立てやすいですしね。
直近の評価期間から、会社から公式に壁打ち用のAIが提供されたことも追い風になったなと感じています。 会社の評価指標情報は自身でそれなりに網羅的にAIに提供できているつもりですが、それでも壁打ち用AIにレビューさせてみると、別の観点でのフィードバックを受けることが多かったです。そういった評価観点の欠損をAI間で補うループが作れたことで、自身の労力を多く割かずともどんどん自己評価の精度が上がっていく工程は、気持ち良さすら感じる時間でした。
…ただ、たまに「来期は◯◯の研修を受けます」といった私が希望していないNext ActionもAIによって記入されていたので、AIによって記入された内容のレビューには気を抜けません。
こうしてAIを活用して制作した私の自己評価は上司のレビューを比較的スムーズに通過し、結果的に評価期間中も私が本来やりたいと感じていた業務に多くの時間を割くことができました。
開発業務をAIの力で効率化する話はよく挙がりますが、会社員として働くエンジニアの仕事は開発だけではないはずです。 この記事を読んだ皆さんに「自分が苦手な業務をどうにかAIに助けてもらえないか」と思考をしてみるきっかけにこの記事がなっていれば幸いです。
お話ししましょう!
私、岐部(@beryu)はタイミーでiOSアプリエンジニアをしています。iOSアプリ開発の中でのAI活用の情報共有だったり、評価業務の悩みを誰かに話したいだけでも結構ですのでw、ご興味があればぜひお話ししましょう!