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タイミー開発者ブログ

Slack の Huddles を使ったプラクティスとその背後にある考え

はい、亀井です。 yykamei という名前でインターネット上では活動しています。所属はタイミーです。

今回は Timee Advent Calendar 2024 の 19 日目の記事として、Slack の Huddles を使ったプラクティスとその背後にある考え、というタイトルで、筆を取らせていただきました。

仕事におけるコミュニケーションツールはいろいろありますが、その中でも Slack を使っている組織は多いのかなと思います。その Slack の機能の一つとして Huddles が 2021 年にリリースされました。当時はコロナ禍ということもあり、リモートワークが浸透してきた中でどのようにしてオンラインでのコミュニケーションを充実させるか?をまだまだ模索している中だったと思います。そんな中、 Discord のようにクイックに会話を開始できて、かつ、他のメンバーもリアルタイムで会話に参加できる機能として Huddles がリリースされ、当時の私は少し驚きました。

これまでも Zoom だったり、 Google Meet だったりでビデオチャットは可能でしたし、それこそ Slack Apps などを使えば、簡単にそれらのビデオチャットを呼び出してインスタントに会話が可能でした。しかし、 Slack の Huddles はそれが普段使っているチャットツールに組み込まれていると言うところに大きなアドバンテージがあると思います。そして、誰がどこのチャンネルで会話しているのか?が見える、というのも魅力的なポイントかと思います。

組織のカルチャーにもよりますが、 Slack を使っていてよく Huddles を利用している環境だと、自分が join しているチャンネルのいずれかで Huddles による会話が複数並行して行われることになります。実際のオフィスにおいても会議室は複数あって同じ時間帯に複数の会議室でミーティングが行われることは普通のことですが、それが可視化され、それぞれのミーティングに誰がいるのか?を知ることができるのは意外とメリットが大きいと感じます。どういうメリットかというと「賑やかでいいなー」というメリットです。はい、実利的なメリットというよりも感情面でのメリットです。 Slack を起動すると一目で賑やかさが可視化されるわけですよね。実際に賑やかなのかどうかはわかりませんが、人と人とが会話しているのだからおそらく賑やかなはずです。

Slack Huddles を使ったプラクティスは世の中にすでにたくさんあると思いますが、ここでは私が考えるもの、またなぜそれらを使うのか?を列挙してみようと思います。

Huddles を開いて作業する

Communication は大事ですよね。その Communication を extreme にやるためには会話をする機会が必要です。では会話をする機会を増やすにはどうすればよいのか?という問いに対する答えがこのプラクティスです。リモートワークが主流ではなくメンバーの多くがオフィスで働いている場合は「ちょっといいですか?」という会話ができました。とはいえ「ちょっといいですか?」という声がけ自体、ハードルが高いと感じる場合もありますよね。私はありました。そして、リモートワークが中心の働き方になるとそのハードルの高さ自体感じることなく会話する機会は失われました。特にコロナ禍でこの問題が顕著になりましたね。この問題に対して、多くの組織があの手この手でバーチャルオフィスのツールを導入したり「雑談をする」という時間をカレンダー上でセットしたりして工夫をしてきました。そうした工夫のうちの一つが Huddles を開いて作業する、です。

誰かが Huddles を開いて何かをしていると「なんだなんだ?」という感じで興味を持ってくれた人が Huddles に参加してくれます。そうなったら雑談をしてもよいですし、軽く挨拶をかわして作業を続けてもいいでしょう。

このプラクティスは、チームが継続的に会話をすることに慣れていない、あるいは、会話をすることに対して価値を感じていない場合に有効です。 Communication が大事、という価値観をチームに押し付けてもよいのですが、そうするとチームからは信頼されなくなるでしょう。 Communication も大事ですがチームからの信頼も大事です。もしかしたら、誰もその Huddles に来ないこともあるかもしれません。それでもいいのです。ただそこにいるという状態をまず作り出すこと、それ自体に価値があります。そして、何かのきっかけでチームの誰かが話しかけてくれるかもしれません。そうしたときにその会話を楽しみましょう。そのうち「ここに来れば仕事上の相談ができるかもしれない」という雰囲気を作り出せるかもしれません。そこまでいけばチームが Communication の価値に気づいている可能性があります。

注意点としては、このプラクティスを行うと、ずっと Huddles にいる、という状態になってしまいがちということです。 Communication は大事ですが、人間性も大事です。休みましょう。8時間ずっとオンラインというのはどう考えても非人間的です。無理のない範囲で実施するようにしましょう。

また、もう一つ注意点があります。 Huddles から抜けることを促す、あるいはいつでも Huddles から抜けることを奨励しましょう。というのも、一度会話に入ったら途中で抜けることに躊躇する人もいるからです。そうなると、「抜けたいのに抜けられない」というふうになってしまってせっかくの Huddles の場がその人にとっては好ましくないものに変わる可能性があります。 Huddles というのは出たり入ったりが自由なものなのだ、という雰囲気を普段から醸成しておくとよいでしょう。

他のチームの Huddles に飛び込んでみる

他のチームが複数人で楽しそうに会話しているのをみると思わず飛び込んでみたくなりますよね。飛び込みましょう。わざわざ会議用のビデオチャットではなくあえて Slack で Huddles をしているのですから、これは誘われていると言っても過言ではありません。

なぜこれをするのでしょうか?自分のチーム外のことは普段の業務に関係することは少ないでしょう。その時間を使うぐらいなら普段の業務に時間を割り当てて締め切りが迫っている自分の作業に集中したくなります。もちろん、自分のタスクが逼迫しているなら無理をしてはいけません。ただ、もし自分の作業に余裕があるのであれば、他のチームの働き方を覗いてみると意外と発見があるものです。私が最近発見したことは次のようなものです。

  • あるチームのリファインメントのやり方が勉強になった
  • あるチームのタスクの切り方が勉強になった
  • 「モブプロをやる」と言っても「モブプロ」の定義はチームによって異なるようだ
  • スプリントレビューに対する態度が勉強になった
  • あるチームが適用したコードが自分のチームに開発に影響することがわかった

同じ組織とはいえ隣のチームは仕事の仕方が異なります。もしかしたら文化も異なるかもしれません。同じ言葉なのに異なる意味で会話していることもあります。そうした「異なるもの」に触れることは新たな洞察を得ることにもつながり、学びになります。自分のチームをもっと効果的にアウトカムを生み出すチームにするにあたって「これなら自分のチームに取り入れるとうまくいくのではないか?」という発見があるかもしれません。もちろん、こうした学びは書籍やインターネット上の情報を活用しても得られなくはないでしょう。ただ、そうした学びの実践を目の当たりにできる機会は少ないです。 Huddles でのリアルな会話を目撃することは、そうした体系立った知識がどのように活用されているかを発見する場として活用できるのではないかと思うのです。

加えて、他のチームの Huddles に入ることで単純にいろいろな人と知り合いになれます。やはり知り合いが社内に多いと困った時に頼りやすいですよね。実際、最近 SQL のパフォーマンスについて相談させてもらって非常に助かりました。「ちょっと話したことがあるから頼ったら助けてくれるかもしれない」というぐらいには簡単に知り合いになれるのがこのプラクティスの魅力です。

とはいえ、私も嫌われたくはないので空気を読んで Huddles に入るかどうかは見ます。たとえば、 Huddles を始める前後のやりとりで何かしら深刻そうな会話がテキストで行われていたり、なんとなく 1on1 のような空気感の会話なのであれば入らないようにしています。この読みが当たっているかどうかはわかりません。もしかしたらあまり深く考えずに飛び込んでもよいのかもしれませんが、そのあたりはもともとあった人間関係も影響すると思います。

Huddles にトピックを設定する

Slack Huddles でトピックをセットできるのはご存じでしょうか?このトピックをセットすると Huddles に入っている人からも入っていない人からもどのような会話が行われているのか?がわかって便利です。トピックをセットする目的は、雑談ではなく「今これについて話している」というのを宣言し、 Huddles に入っていないがそのトピックに対して興味がある人を誘い込むことにあります。このプラクティスは、特定の誰かをメンションしたいわけではないが特定のトピックについて話したい、そして、そのトピックに関心のある人を呼びたいときに有効です。

プロジェクトやタスクなどすでに実施することが決まっている業務の場合、関係者は決まっているでしょう。しかし、次に何をするか?という探索などでは、柔軟な考えを取り入れたいですし様々な人の意見を聞きたいでしょう。多種多様な職種の人たちを集めてざっくばらんに話すことができればもしかしたら新しいアイディアが生まれるかもしれません。そうしたときにどうやって人を集めるか?というのは意外と難しいです。そこで Huddles のトピックを広告のように掲げることで関心のある人を呼び込むのです。

これは、「Huddles を開いて作業する」というプラクティスと組み合わせて使うこともできるでしょう。たとえば、パフォーマンスチューニングに取り組んでいるとします。その取り組み内容である「パフォーマンスチューニング」をトピックにセットするとどうでしょうか?チューニングが好きそうな人たちを呼べそうな気がしませんか?

このように Huddles のトピックは人を呼び込むことを目的としています。呼び込んだ後に途中から雑談に変わったらトピックは変更すればよいでしょう。

最後に

ここまで Slack Huddles のプラクティスをみてきました。どれも基本的なものですが、それを使う背景を考えてみると案外面白いですね。実はこれまでほとんど何も考えずにこうしたプラクティスを行ってきたのですが、こうしてアドベントカレンダーを書く機会をいただいたことでそのプラクティスの背景が言語化されました。この場を借りてアドベントカレンダーの機会をいただいたタイミーのプロダクト組織に感謝いたします。