タイミーQAEnablingチームの矢尻、岸、片野、山下、松田です。
ソフトウェアテストに関する国内最大級のカンファレンス「JaSST (Japan Symposium on Software Testing)」が2025/03/27、28の2日間にわたって開催されました。


本レポートでは、印象に残ったセッションの内容を中心に、2日間の会の様子をお伝えします。
「タイミーQAの挑戦」JaSST登壇レポート:品質文化と開発生産性の両立を目指して
タイミーでQAコーチを担当している矢尻です。
今年のJaSSTは、タイミーとして「タイミーQAのリアルな挑戦:DevOps時代の開発生産性と品質文化を創造する」というセッションで登壇させていただきました。QA Enablingチームの立ち上げから約1年間の試行錯誤を経て得た学びや課題を、チームメンバー全員でパネルディスカッション形式で共有しました。短いセッションでしたが、「品質文化をどのように組織に根付かせていくのか」「開発生産性を保ちながら品質を向上させるには?」など、多くの参加者の皆さんから具体的で深い質問や意見をいただき、学び合いが生まれる貴重な場になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
また、全体のセッションを通じて印象的だったのは「チーム組成」や「品質基準」、そして「開発プロセスへのQAの適応」といったテーマへの関心の高さです。QAを単なるテスト業務としてではなく「品質文化を醸成する存在」として位置付け、チームや組織をどう巻き込み、どう改善していくのかについて議論が活発だったのが印象深かったです。QAがビジネス価値にどう貢献できるかを考えるヒントが多く、特に他社が品質基準の明確化やプロセス改善にどのように取り組んでいるかを知ることで、自分たちの現状や課題を改めて客観視できました。
今回のJaSSTをきっかけに、今後もタイミーのQA Enablingチームとして、開発現場により深く寄り添いながら、品質と開発生産性の両立、そしてさらなる品質文化の浸透を目指していきたいと思います。
大規模プロジェクトにおける品質管理の要点と実践
タイミーでSETをしています岸です。JaSSTは昨年に引き続きオフラインでの参加でした。知人と久しぶりに話もできたりで良い2日間を過ごせたと思います。
私が聴講したセッションからは「大規模プロジェクトにおける品質管理の要点と実践」のレポートをお届けします。
第三者検証のSHIFT社から2名でインタビュー形式の発表でした。ここでの「大規模」はリリースまでに10年、参画人数は数千人を想定とのことで、なかなか経験する機会のないものです。とにかくプロジェクト初期からステークホルダーが多いので、関係者間でどのように調整するのか、いわゆる隠れた仕様をどのように拾い上げるのかが焦点になりました。回答としては、リスト化やスケジュール調整をまずしっかりすること、現場に足を運んでユーザーの声をしっかり聞くことを挙げていました。その上で「100%を目指すといつまでも要件定義が終わらない。90%くらいを目指し、漏れたものは次のフェーズへ回すようにする」ことがとても重要だとおっしゃっていました。
私たちタイミーの開発では10年がかりで続くような長期プロジェクトはなく、小さいリリースを何度も繰り返すスタイルをとっています。一見違う世界の話のようにも感じられますが「100%を目指すと終わらない」という話は私たちにも共通するものだと感じました。
ネット銀行におけるスマートフォン実機でのテスト自動化について
SETの片野です。
今年のJaSST TokyoはタイミーのQAチームとして登壇する機会をいただき、私個人としては初めての現地参加となりました。
たくさんの素晴らしいセッションの中で、特に印象に残ったのは「銀行におけるスマートフォン実機でのテスト自動化について」(坂本豪志さん) です。
このセッションでは、BaaS (Banking as a Service)としてパートナー企業にスマートフォンアプリを提供するネット銀行における、スマートフォン実機を用いたテスト自動化の取り組みについて語られました。
スマートフォンの実機を用いた受入テスト、リグレッションテスト等を一部自動化することで、パートナー企業1社導入につき数十人日規模だったテスト工数を80%近く削減されたそうです。その過程で直面した課題と解決の事例として、事前データの準備、テスト端末同士の相性による接続性の問題、特定のロケーターで要素がつかめなくなる不安定なテストへの対応などが紹介されました。
特に興味深かったのは事前データの準備に関する取り組みです。テスト対象システムのユーザーデータは属性や関連データ(多岐に渡る金融商品とそれらの契約状態など)が多く、加えて複数のサブシステム間で整合性を取る必要があるため、データ準備に手間がかかったりテストの繰り返し実行が難しかったそうです。これらの問題に対して、データ駆動テスト的なアプローチの適用や、テスト再実行時のデータリセット要否に基づくテストシナリオの整理などを行い自動化に向けた改善を実現したそうです。様々な事情で手動オペレーションや運用でカバーせざるを得ない部分を残しつつも、ご本人の言葉を借りれば「泥臭く」取り組まれたとのことでした。
この「泥臭く」という言葉に象徴されるように、セッション全体を通じて理想論や教科書的な内容にとどまらず、現実の課題に真正面から向き合い、解決策を模索する姿勢が強く伝わってきました。それは、まさに私たちが日々の業務で直面している状況とも重なり、深く共感する点がありました。また、当日のセッションで語られた内容はどれも現場の経験から得られた現実的かつ有用な情報ばかりでした。私自身もテスト環境の改善に携わっており、今後の業務に直接活かせる具体的な内容が数多くありました。
テスト環境の改善では、時にスマートな解決策を見いだせず泥臭い作業の連続になることがあります。しかし、このセッションを通じて、理想と現実のバランスを取りながら、粘り強く課題解決に取り組むことの大切さを改めて認識しました。
QAが売上に貢献できることはなんだろう?
タイミーでQAコーチをしている山下です。(入社して半年たったばかりでまだまだ見習いQAコーチという気持ちです。)
久しぶりにオフラインでJaSSTに参加をしてきました。新しい会場でとても綺麗で快適でした!が、オフラインだと会場が満席で聞きたいセッションを聞けない…!ということもあり、オフラインの難しさを思い出したりもしました。
今回私が参加した中で、特に印象に残ったセッションは「ソフトウェアがJISマーク認証される時代に!~標準化がもたらすソフトウェア品質の確保や市場への信頼性向上~」でした。
タイトルの通り、ソフトウェア製品でJISマークの認証を取るためのプロセスなどを紹介してくださっていたのですが、一番刺さったのは「なぜJISを取ろうと思ったのか?」という質問に対する登壇者の伊藤さんの「QAが売上に貢献できるのはなんだろうとよく考えていて、JISがあることで選んでもらえることがあるんじゃないかと考えた」という回答でした。 だいぶ昔にWACATEに参加した際に「一生懸命たくさんテストしたとして、そのプロダクトは売れるの?」と問いかけをしてもらったことがあり、それが確かにそうだ…と当時の自分には衝撃的で時折思い出しては考えるテーマだったので、JISマークの取得が競合との差別化につながるのかー!と目から鱗、明るい気持ちになりました。
機能追加があった場合には追加の認証試験が必要なため、実際にスピードの速い開発で適用することは難しそうでしたが、これからも引き続きQAが売上に貢献できることは何か?は考え続けたいテーマだと思いを新たにできました。
その他にも、このセッションに引き続き品質基準に対するテーマにしたセッションなど多くの発表や、昔の同僚と久しぶりに再開しどんなところでAIを活用しているか話したりと多くの刺激をもらえた2日間でした。
私がJaSSTで心を奪われた,組織を強くするマネジメント術
2024年の9月に入社したSETの松田です。
先日参加したJaSSTは、私にとって初参加・初登壇の機会となり、非常に特別な2日間となりました。
特に印象に残ったセッションは、SmartHR平田さんによる「スケールアップ企業のQA組織のバリューを最大限に引き出すための取り組み」です。
セッションでは、主にマネージャーとしての目標設定やチームの仕組みづくりについて語られていました。平田さんが、マネージャーとして取り組むべき「チームの現状課題」「チームが目指すべき目標」「目標達成のための具体的なタスク」を明確に言語化されていた点が非常に印象的でした。これは、QA/SETチームだけでなく、あらゆる部署やチームにも共通して当てはまる内容だと感じました。
メンバーの能力を最大限に引き出すために、チームの先頭に立ってあらゆるステークホルダーと交渉・調整を行い、障害となる壁を次々と取り除いていく平田様の姿勢に「こんなマネージャーがいるのか!」と深く感銘を受けました。
ぜひまた機会があれば、品質保証部のセッションをお聞きしたいです。
スケールアップ企業のQA組織のバリューを最大限に引き出すための取り組み | ドクセル
JaSSTは、テストに関する知見を深めるだけでなく、多くの素晴らしい方々と出会える貴重な機会でした。来年は、私もコミュニティの一員として、何か貢献できるよう準備して参加したいと思います。来年も皆様とJaSSTでお会いできることを楽しみにしております!!!!!!!
おわりに
弊社は今回2度目のゴールドスポンサーとしてJaSST Tokyoに協賛させていただきました。次回以降もなんらかの形で貢献して一緒にコミュニティを盛り上げていければと思います。
また、弊社ではQA、SETの採用も積極的に行っております。
hrmos.co hrmos.co タイミーのQA、ソフトウェアテストについてもっと知りたいという方はぜひカジュアル面談でお話ししましょう。