タイミーのプロダクトマネージャー(以下、PM)の 柿谷(@_kacky)、 高石(@tktktks10)、吉池、大歳 です。
今回は、タイミーの「Kaigi Pass」制度を利用し、12/6にオンサイト開催されたプロダクトマネージャーカンファレンス(以下pmconf)のDAY2に参加してきました。
この制度を通じて、非常に有意義な学びを得ることができましたので、その内容を共有します。
プログラム概要
パネルディスカッション
テーマ:「プロダクトマネージャーと仮説/戦略」
登壇者:FoundX 馬田さん、Zen and Company 宮田さん
OST(Open Space Technology)
参加者持ち込みテーマでのディスカッション
懇親会
他社のPMと交流するネットワーキングの場
パネルディスカッションからの学び
「プロダクトマネージャーと仮説/戦略」というテーマで行われたセッションでは、戦略の現状や仮説構築におけるポイントが深く掘り下げられました。
戦略のコモディティ化
宮田さんが指摘した「戦略のコモディティ化」という現状に対し、差別化の重要性が議論されました。タイミーにおいては、プロダクトマネジメントや戦略を担う立場でもあるため、プロダクトマネージャーがどこにエッジを立てるべきかを再考するきっかけとなりました。
実はSaaSって、国内だと取れる戦略少なくて、4パターンぐらいに集約されるんじゃないか。
— Yoshitaka Miyata / 宮田善孝 (@zenkou_1211) 2024年7月22日
・会計、人事や契約レビューや契約書管理などは垣根を超えて、Multi-Horizontal化
・Verticalは参入障壁高くて、じっくりAll-in-Oneを作り込む…
仮説構築の重要性
宮田さんは、仮説は地道なインプットを重ねた結果として生まれるものであり、見栄えの良さを求めるべきではないと強調していました。また、日本のプロダクトマネージャーが海外事例を十分に収集せず、国内のプラクティスに偏っていることや、議論テーマが数年間変化していない点に警鐘を鳴らしていました。
近年は、ChatGPTのようなツールやX(Twitter)を活用して、海外の著名なPMの投稿や事例を簡単に収集できる環境が整っています。
私自身も、海外事例を意識的に取り入れる姿勢を持ちたいと感じました。
AI経済の構造改革
馬田さんからは、書籍『AI経済の勝者』のフレームワークを用い、AIを活用した3つのソリューションレイヤー(ポイントソリューション、アプリケーションソリューション、システムソリューション)についての説明がありました。特に、リスクを取りながらシステムソリューションレイヤーに挑戦し、構造的な変革を進めることの重要性が強調されていました。 AIを前提とした新しいルールや戦略については、まだ理解が浅い部分も多いため、該当の書籍を読み、知識を深めたいと思います。
OSTでのディスカッション
OSTセッションの開始に先立ち、pmconfスタッフから進行方法の説明がありました。その後、会場から話したいテーマを募り、16の分科会に分かれて合計3回のディスカッションが行われました。
それでは、実際に、我々が参加したOSTで取り上げられたトピックに触れたいと思います。
プロダクトマネジメントに関する海外事例や書籍について知りたい
このテーマでは、パネルディスカッションで取り上げられた海外事例をもとに議論が行われました。プロダクトマネジメントにおけるプロセスや役割の定義など、海外事例をどのように参考にし、実践しているのかが話題に上りました。しかし、参加者の環境や事業フェーズ、提供するサービス内容が異なるため、議論は各自の事例紹介にとどまりました。
さらに、プロダクトの海外展開時におけるPMの役割や、プロダクト開発体制、国内と海外のカルチャーの違いへの対応についても議論が広がり、非常に興味深い内容となりました。
LLMの活用事例
「LLMの活用事例」では、以下の点について議論が行われました。
AI投資の方向性:
トップダウンで進める企業が多い一方、エンジニア主導でボトムアップに進めるケースも見られました。特にアーリーフェーズでは投資家の影響が強く、AIへの投資は手段が目的化しているように見える場合もありました。
ROIの課題:
ROIの可視化が難しい中でも、AIへの投資は不可欠であるという意見が多く出ました。
個人的には、どんなユースケースで活用できるのか考える営みは、プロダクトマネージャーとして最低限要求されるべきなのかなと思いました。改めて、自社のプロダクトマネージャーや戦略部門のメンバーとも議論してみたいなと思いました。
リテンション施策の効果検証
「リテンション施策の効果検証がしづらい」というテーマでは、多くのPMが同じ課題を抱えていることが分かりました。他社のPMからは、データアナリストが充実している弊社の環境について羨ましいという声をいただき、自社の強みを改めて実感しました。
一方で、効果が測れない施策については、測定の努力を続けながらも「やるべきことを決める仕組み」が重要だと考えています。
BtoBtoCのプロダクトはCにどのように向き合うか
多くのBtoBtoCプロダクトにおいては、キャッシュポイントがBにあるためにCに対する体験改善がどうしても後回しになってしまう課題感について各社の意見交換が行われました。
各社の知見を寄せ集める中で「Cの声を現場までインタビューしにいく」ようなすぐできるアプローチから「Cの体験が良くなることでKPIが達成され、売上があがるようなビジネスモデルに変更する」といった根源的なアプローチまで、さまざまなアイデアが生まれました。
個人的には、顧客が満足するポイントとキャッシュポイントの距離の近さは、優秀なビジネスモデルを構築する上で重要な要素の一つだと考えています。今後自分がプライシングに関わることがあれば、意識したいですね。
メンバーへのスケジュール意識を高める
PMとしてはスピード感を持ってプロジェクトを進めていきたいと考えているが、その温度感・危機感のようなものがどうもチームメンバーに伝わらない….。そんな課題について掘り下げるグループでした。
会話の中では「そもそもどうしてスケジュール感が必要なのか」といった課題の発端について意見交換が行われ、
- 経営陣がプロジェクトの進捗に不透明さを感じており状況を把握したいため
- 顧客の不便を早期に解消したいため
- 確定申告など、1年に1度しか訪れない外部イベントに間に合わせる必要があるため
など、多種多様なきっかけがあることが分かりました。
基本的なアプローチとしては、PMが情報を包み隠さずチーム全体で情報の非対称性を減らしていくことが大事そうです。しかし、元の課題によっては単にチームの計画をオープンにしたり、開発する機能のスコープを削ったりと、スケジュール意識を高める以外の解決方法もありそうだと感じています。
非エンジニアPMの生存戦略
「非エンジニアPMの生存戦略」では、以下の点について議論が行われました。
活躍するために必要なケイパビリティについて
まずは圧倒的に自身の強みであると言えるだけのスキルや経験、ドメイン知識を獲得すること。その自身の強み=ケイパビリティが顧客価値の拡大に寄与する実績を積み上げて深さを出すこと。そのあとに、抽象化と転用でケイパビリティをさらに広げていくと良い、という意見がその場の総論となりました。
結局、エンジニア経験を積むべきか?
主張の一つとしては、見積もりに対する妥当性評価をするためにも一定のエンジニア経験は積むべきという意見がありました。 しかし、その意見は内製の開発組織ではなく、発注元企業の企画担当と請負または準委任の受託企業の関係性を前提としているものでした。ビジネスパートナー関係による利害関係が発生する場合についてであったため、PM とエンジニアが同じ顧客に向かって利害関係なく動く組織においては、必ずしもエンジニア経験は必要ではないといった対比の意見も出ており、開発体制や文化、事業フェーズなどによるという結論となりました。
PM組織の構造
「PM組織の構造」では、以下の点について議論が行われました。
事業部制における PM 組織のあり方
事業部長がトップにいる中での PM 組織におけるレポートラインの妥当性 (CPO といった機能職種としてのトップより PL 責任を持つ事業部長のキャリアしか道がなさそう)と、その組織のマネージャーの振る舞いをどうするかといった議論がなされました。 事業フェーズや経営上、事業上の課題により適切な組織デザインが思考されるべきで、一義的なものはないという意見が多く出ました。
懇親会での交流
懇親会では、他社のPMとリアルに交流する機会がありました。Xで知っていた方々と直接話せたのは特に有意義でした。数年ぶりに再会する方もちらほらいたりして、楽しい時間でした。
異なる環境や課題を持つ企業の話を聞くことで、自社の環境や課題を相対的に捉え、視野を広げる良い機会となりました。
最後に
今回のカンファレンスを通じて、多くの刺激を受けると同時に、自分自身のキャリアや現在の課題について深く考える時間を持つことができました。特に、大量のインプットを通じて質の高い仮説を構築する重要性や、AI時代におけるプロダクトマネージャーの役割について再認識しました。
Kaigi Passを活用して得たこの学びを、今後の業務にしっかり活かしていきたいと思います。