タイミーのyama_sitter、須貝、小林です。
国内最大級のアジャイル、スクラム関連のイベント「Regional Scrum Gathering Tokyo 2024(RSGT2024)」 が1/10〜1/12の3日間にわたって開催されました。
タイミーには世界中で開催されるすべての技術系カンファレンスに無制限で参加できる「Kaigi Pass」という制度があります。
こちらの制度を利用して今年はスクラムマスター3名、エンジニア3名が参加してきました。
前編に続き、後編の今回はエンジニア3名から参加レポートをお送りします。
SM/EMからエンジニアに視点を変えて参加
エンジニアの yama_sitter です。
参加は今年で2回目になります。前回は前職からSM/EMの立場として参加しましたが、今回はタイミーの現場エンジニアという立場で参加する形となりました。
「エンジニアからSMになり、EMを経てエンジニアに戻った人」という視点で、特に印象に残ったセッションが3つありましたので紹介します。
Badプラクティスを選んで失敗しながら進めた新規プロダクト開発
自分はSM時代に「形」に捕らわれ過ぎて色々な失敗を重ねてきました。一方で今所属するチームではいわゆるスクラムの形式では仕事をしておらず、それでもちゃんと成果が出せている状態です(※1)。これらの経験から、この1年ほどは「アジャイルは形じゃない」というのを自分なりに理解し、また考え続けていました。(この間、世に出回る「べき論」や「プラクティス」みたいなものをとにかく疑ってかかっていました)
そんな中見たのがこの「Badプラクティスを選んで~」のセッションです。ここでは世間的にはNGとされるプラクティスを敢えて用い、(もちろん苦しみながらも)ちゃんと成果を出した事例が語られていました。Badと言われるものだと分かった上で、そのリスクを理解し取り入れ、結果に結び付ける。このあり方は教科書的でこそないものの、ちゃんとした一つの解だなぁ、と。
つまるところ「価値に向き合い、自分たちが考えうる/持ちうる最大の力で成果を生み出す」ことが重要なのであって、形ではないなという話です。今の自分が感じていることを後押しし更に前に進めてくれたこのセッションは非常に有意義なものでした。
こちらはスライドもあるので是非ご一読を。
※1 あくまで会社全体としてはスクラムに力を入れており、自チームは特殊なケースです
Lack of curiosity: The silent killer of agile
「好奇心の無さはアジリティを殺す」という話です。内容は勿論ですが、特にこのタイトルが強く印象に残っています。
入社して半年、以前考えていた抽象的な問いからは離れて今はひたすらに具象と向き合っています。入社直後に感じていた様々な疑問も少しずつ薄れてきました。アウトプットこそ出せているとは思います。が、少しずつ「疑問に思う力」や「ワクワクする力」がマヒしていっているのを感じています。
これだと、本当に向き合うべき課題に気付き向き合うことができないんですよね。セッションでも述べられていましたが、「人間はルーチンが好き」なので尚更です。
自分や目の前のコードとひたすら向き合うだけでは高い視点からは物事を考えられません。疑問に思わなければ脳が刺激を受けずに鈍化していきます。ワクワクしていなければ途中で力尽きます。結果として気付ける課題、向き合う課題がすごくミニマムになっていく。
現場にフォーカスするだけだと、巡り巡って良いエンジニアにはなれないなぁ、ちゃんと好奇心を持ち続ける努力をしないとなぁ、と感じさせるセッションでした。
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「レガシーコード改善ガイド」の著者であるMichael Feathersさんのキーノートです。
めちゃくちゃためになる話ばかりでしたが、個人的に刺さったのは「プロセス、アーキテクチャ、チームの能力、組織構造といった各レイヤーの目標は、 “価値に至るまでのプロキシ” でしかない」という話です。
“プロキシ” というのが特に良くて、これを意識すると「今の取り組みとその結果は、必ず何らかの価値に転換されるために存在する」という考え方ができます。当然のことではあるんですが、目の前のことにフォーカスしたり「べき論」に囚われたりすると忘れがちだなぁ…と思ったりします。
余談ですが、前職のSM最初期の頃は「それっぽいメトリクス」を見つけては右往左往していました。あれはあれで必要なプロセスだったものの、できればこの “プロキシ” の考え方を持っておきたかったです。
視点を変えての参加となりましたが、選ぶセッションも見るスタンスも感じることも得られるものもかなり違うし、得るものの幅が増えていることに気付いて面白かったです。一度全力でSMをやってからエンジニアに戻ると面白いですね。
とまぁここまで色々書きましたが、正直セッションよりも「素晴らしいセッションを見たあとに同じ熱量を持ったタイミーメンバーと集まり、酒を飲みながら議論する」時間が一番良かったです。こういった時間のために行っているフシすらある。
総じて、RSGTは今年も良いイベントでした。企画/運営の皆さま、ありがとうございます。
メンバーと自分たちの組織について語り合うきっかけに
エンジニアの須貝(CSM保持)です。
RSGTは今回が初参加でして熾烈なオンサイトチケットの争奪戦を勝ち抜いて現地に行ってまいりました。自分は現在はマネージャーでもスクラムマスターでも無いのですが、以前からチーム・組織で成果を出すにはどうすれば良いかといったテーマに興味があったので参加しました。
基本はセッションを聞くことを中心に、合間の休憩時間などで知り合いの方とお話をして過ごしました。中でも印象に残ったセッションのひとつはJoe Justiceさんの「ジョーが語る、Teslaでの衝撃的な開発スピード」です。電気自動車メーカーTeslaの開発サイクルのあまりの速さに本当に自動車の開発なのか!?と驚きの連続でした。と同時にハードでこのスピードでできているのだからソフトウェア開発をしている自分たちももっとやれるのでは、勝手にできないと思っているだけなのでは、という反省もありました。
オフトピックなところだと会場内でプロのカメラマンに写真を撮ってもらえるフォトブースがあったのが良かったです。Global Scrum Gathering Amsterdamで行われていたものが日本にも輸入されたそうです。
自分たちは普段フルリモートなので、弊社のメンバーと自分たちの組織などについて対面でじっくり話せたのも非常に良い体験でした。チャンスがあればまた参加したいと思います。
RSGTは気づきと学びの場
こんにちは!タイミーでQAスペシャリストを担当している小林依光です。
RSGTはオンラインで参加しましたが、今回も「やっぱりそうだったんだ」と自分の知識や経験を後押ししてくれる発表内容に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。 事例/実績、考え方の共有は気づきと学びの場だと、改めて思いました。 少しですが、私が気になったセッションについて、紹介したいと思います。
「ベロシティ Deep Dive」ではベロシティを生産性に活用することをやめましょう!ということを多様な角度から説明していました。どの角度からの説明も納得感のあるものばかりでしたが、一番印象的だったのが、“アジャイルやスクラムが目指すのは価値の実現であり、この文脈での生産性は「付加価値生産」である”という説明でした。アジャイルを採用し探索的/実験的にプロダクトを開発し価値を提供するという基本を忘れてはいけないと学べました。
「プロダクトをあきらめるとき」のセッションは一般的なスクラムの話ではありませんでしたが、実際のプロダクト開発で遭遇する実例でした。特に“プロダクトを終了させるときの費用”をプロダクトバックログの順位の下の方に入れておくという考えには共感でき、あきらめる判断やサービス撤退に必要な洗い出しは、プロダクトを止めるときでなく開発を始める際に決めておく必要があると何度か痛感していたので、改めていままでの経験は役に立つことがあると思いました。
紹介したセッション以外からも多くを学べたRSGT、来年は現地で参加できるようにしたいと思いました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
参加して満足して終了では意味がない!ということで後日参加者全員で振り返り(Fun Done Learn)も行いました。しっかりとネクストアクションも生まれたので、ここからチーム・組織に今回得た学びを還元していければと思います。
来年もまたGatheringしましょう!