タイミーの矢尻、須貝、razです。
ソフトウェアテストに関する国内最大級のカンファレンス「JaSST (Japan Symposium on Software Testing) ‘24 Tokyo」が2024/03/14、15の2日間にわたって開催されました。
今回は我らがGo AkazawaとYorimitsu Kobayashiも登壇!その応援も兼ねてQAコーチ、エンジニア、スクラムマスターの3名が参加。世界中で開催されるすべての技術系カンファレンスに無制限で参加できる「Kaigi Pass」という制度を利用しました。
本レポートでは、印象に残ったセッションの内容を中心に、2日間の会の様子をお伝えします。
噛みしめるほどに味わい深い「Making Quality Tangible」
今年の1月に入社したばかりの駆け出しQAコーチの矢尻です。
毎年楽しみにしているJaSST Tokyoに今年もオンライン視聴で参加しました。
視聴したすべてのセッションが示唆に富んだ学び多きものでしたが、中でもインパクトの大きかったGojko Adzic 氏による基調講演「Tangible software quality」の感想をお話します。
「Tangible software quality」を直訳すると、「具体的なソフトウェア品質」となります。
このセッションでは直接的にテストできないソフトウェア”品質”をプロダクトに”作り込む”ためのマインドセットやモデルが紹介されました。
セッションの最後に紹介された5つの「Making Quality Tangible(品質を具体化するためのガイドライン)」は、哲学的で難解ですが、噛みしめるほどに味わい深いものでしたので私なりに意訳して感想に代えさせていただきます。
- MEASURE PRESENCE, not absence(意訳:不在ではなく存在を測定せよ) 欠陥や問題点ではなく、実現された価値に焦点を当てることの重要性を強調されました。ポジティブな側面や魅力を評価することが、価値や魅力を感じるための鍵であると感じました。
- Describe multiple QUALITIES(意訳:複数の質を記述せよ) 内容に忠実な感想ではありませんが、例えば生活の質(QOL)のように健康・経済的安定・教育・職業・家族関係・文化的充足感など様々な指標で構成され、どれか一つが満たされていれば幸福というわけではないということに似ていると感じました。 ソフトウェアも同様に、使うひとが幸せであるための多様な構成要素を要求される水準で満たすことが重要と受け取りました。
- Trade-offs are a PRODUCT DECISION(意訳:トレードオフは製品の意思決定の一環である) 誰もがt_wada氏の「質とスピード」を想起したのではと思っています。 もちろん「質とスピード」の間のトレードオフは解決可能と私も思っていますが、ここでは網羅的なテストでリスクをゼロに近づけることではなく、どの品質特性がどの程度重要なのか重み付けをして、重要なものからバランス良くリソースを配分するのが重要と受け取りました。(「要はバランス」ですね)
Shape priorities with a MODEL(意訳:モデルを用いて優先度を形成せよ) 製品の意思決定の一環として生じるトレードオフを判断する基準として勘は通用しません。ここでシンプルで有用なモデルとして「有用性」「差別化」「飽和点」から成るQUPER Modelと「マズローの5段階欲求モデル」が紹介されていました。
VISUALISE and ACT(視覚化して行動せよ) もうこれは字面通り「収集したメトリクスを根拠に行動せよ」ということかと思います。 (そういえば最近「見える化」って聞かなくなりましたね)
まさにタイミーでも価値あるソフトウェアを最速でデリバリーするためにチームトポロジー型の組織戦略を採用しています。価値に着目している点で同じ方向性のセッションだと感じましたので、今回紹介されたモデルやメトリクスは折に触れてチームで紹介し試していけたらと考えています。
異業種の品質保証から得られた学び
自動テストが好きなバックエンドエンジニアの須貝です。
JaSSTは初参加(オンライン視聴)でして、弊社の赤澤と小林の登壇を応援しようというのがきっかけでした。
全体を通して一番印象に残ったのはトヨタ自動車の長尾洋平氏による「自動車のソフトウェア品質に関する現場の試行錯誤」です。
自動車を制御するソフトウェアは数千万から数億行のコードからなっており、まずその規模と複雑さに驚きました。また、テストコードの品質にも規格があり、その質を担保するためにミューテーション分析などを活用しているそうです。
一方で実機テストの制約の多さに苦労されているとのことでこれは自動車ならではの悩みだなと思いました。テストのアプローチとしてQAが要件定義段階から関与するいわゆるシフトレフトを実践されている点も非常に興味深かったです。
また他のセッションですと「音楽の世界から学ぶ、ソフトウェア品質」は、プロ演奏者を招いて音楽とソフトウェアという無形のプロダクトの質について探る野心的な試みでした。
私はソフトウェアエンジニアという立場ですが、日々の開発では自身でもテストを行っているため、大変学びの多いイベントでした。
「アジャイル」「スクラム」が多く出てきたことに驚き
QAやテスト界隈がどんな感じなのか気になったので参加しましたスクラムマスターのrazです。
私もJaSSTに初参加(オンライン)でした。正直なところ、社内で参加希望者を募るまで、存在も知らなかったのですが、参加できてよかったです。
私も印象に残ったのは、トヨタ自動車の長尾洋平氏による「自動車のソフトウェア品質に関する現場の試行錯誤」なのですが、須貝さんが感想を書いてくださってるので割愛しておきます笑。
色々な発表を見させていただきましたが、全体的な感想として「アジャイル」や「スクラム」といったキーワードがたくさん出ていたのが驚きでした。ソフトウェアエンジニアがアジャイルなプロダクト開発に変化していった中で、QA組織やQAエンジニアがその変化へ適応していこうとしているように感じました。
その中でも「品質」について「誰のなんのための品質なのか」を考えているのが、とても良かったです。発表の中には「本当にその考えでいいのか?」という議論の余地はあったかもしれませんが、顧客中心に品質を議論する活動、それを継続するのは素晴らしいことだと思います。
弊社でも「顧客のための品質」について、もっと考えていければと思います。
おわりに
弊社は今回ゴールドスポンサーとして初めてJaSST Tokyoに協賛させていただきました。次回以降もなんらかの形で貢献して一緒にコミュニティを盛り上げていければと思います。
また、弊社ではQA、SETの採用も積極的に行っております。
タイミーのQA、ソフトウェアテストについてもっと知りたいという方はぜひカジュアル面談でお話しましょう。