Timee Product Team Blog

タイミー開発者ブログ

Ruby 3.2+YJIT 本番運用カンパニーになりました #rubykaigi

こんにちは。2023年1月に株式会社タイミーに入社したバックエンドエンジニアの id:euglena1215 です。

RubyKaigi 2023 がとうとう明日に迫ってきました。楽しみですね。
タイミーは RubyKaigi で初めてブース出展を行います。至らぬ点もあるかと思いますが、RubyKaigi を一緒に盛り上げていければと思っています!どうぞよろしくお願いします。

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今回はタイミーが本番運用している Rails アプリケーションに対して Ruby 3.2.2 へのアップデートと YJIT の有効化を行い、パフォーマンスが大きく改善したことを紹介します。

前提

タイミーを支えるバックエンドの Web API は多くのケースで Ruby の実行よりも DB がボトルネックの一般的な Rails アプリケーションです。JSON への serialize は active_model_serializers を利用しています。

今回の集計では API リクエストへのパフォーマンス影響のみを集計し、Sidekiq, Rake タスクといった非同期で実行される処理は集計の対象外としています。

今回は Ruby 3.1.2 から Ruby 3.2.2 へのアップデートと YJIT 有効化を同時に行いパフォーマンスの変化を確認しました。そのため、パフォーマンスの変化には Ruby のバージョンアップによる最適化と YJIT 有効化による最適化の両方の影響があると考えられますがご容赦ください。

結果

以下のグラフは API リクエスト全体のレスポンスタイムの 50-percentile です。アップデート前後でレスポンスタイムが約10%高速化されていることが確認できました。

API リクエスト全体のレスポンスタイムの 50-percentile

リクエスト全体としては大きく高速化されていることが確認できました。それでは、レスポンスが遅く、時間当たりのリクエスト数が多いアプリケーションの負荷の多く占めるエンドポイントではどうでしょうか?

そこで、タイミーの Web API のうち2番目に合計の処理時間*1が長いエンドポイントへのパフォーマンス影響を確認しました。*2

以下のグラフは2番目に合計の処理時間が長いエンドポイントのレスポンスタイムの 50-percentile です。Ruby アップデートの数日前に GW 中の負荷対策のためのスケールアウトを実施したことで変化が少し分かりにくくなっていますが、Ruby 3.1.2 から Ruby 3.2.2+YJIT にしたことによって10%以上高速化されていることが確認できました。

2番目に合計の処理時間が長いエンドポイントのレスポンスタイムの 50-percentile

元々十分に高速なエンドポイントだけでなく、アプリケーション負荷の多くを占めていたエンドポイントのパフォーマンスも改善されていることが分かります。Ruby 3.2 アップデート+YJIT 有効化はパフォーマンスチューニングへの十分実用的な打ち手と言えるのではないでしょうか。

まとめ

Ruby 3.1.2 から Ruby 3.2.2 へのアップデートと YJIT を有効にしたことでリクエスト全体のレスポンスタイムの 50-percentile が約10%高速化されました。また、アプリケーション負荷の多くを占めていたエンドポイントも同様に10%以上高速化されていることを確認できました。

Ruby 3.2’s YJIT is Production-Ready でも YJIT によって Shopify が 5~10% 高速化されたと記されていることから、「Ruby 3.2 の YJIT は一般的な Rails アプリケーションを 10%程度高速化させる」と考えて良いのではないかと思っています。

これほどの高速化に尽力していただいた Ruby コミッターのみなさん、本当にありがとうございました。

余談ではありますが、自社で YJIT を有効化したことによって YJIT という技術がより自分ごとになり、内部で何が行われているのかをきちんと理解したいと思うようになりました。RubyKaigi 2023 で理解を深めようと思います。

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冒頭で説明したように、タイミーは RubyKaigi 2023 でブース出展を行います。今回の記事ではパフォーマンス改善の結果のみ紹介しましたが、タイミーでのこういった技術改善における取り組み方など話したいことは色々あるので、ぜひブースでお話しさせてください!

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また、RubyKaigi 後 5/16(火)にはスポンサー振り返り会を Qiita さん、Wantedly さんと実施予定です。 「自分の会社も RubyKaigi スポンサーをしてほしいと思っているエンジニア」をターゲットにしたちょっとニッチな会ですが、もしかして自分ターゲットかも…?と思う方はぜひご参加ください!

wantedly.connpass.com

*1:合計の処理時間 = 平均レスポンスタイム x hits数

*2:最も合計の処理時間が長いエンドポイントはGWの繁閑の影響でレスポンスタイムに変化が生じ、比較が困難であったため除外しています。