タイミーの林です。
TSKaigi 2024が5/11に開催されました。タイミーはゴールドスポンサーとして参加させていただきました。
また、タイミーには世界中で開催されている全ての技術カンファレンスに無制限で参加できる「Kaigi Pass」という制度があります。詳しくは以下をご覧ください。
私は今回この制度を使ってTSKaigiに参加しました。印象に残ったセッションをいくつかご紹介します。
TypeScript ASTを利用したコードジェネレーターの実装入門
このセッションでは、AST(抽象構文木)について丁寧に解説され、ASTを活用したコードジェネレータの実装方法やそのメリット・難しさについて説明がありました。
この後の様々なセッションでキーワードになるASTについての詳細な説明を早い段階で聞けたことは非常に有益でした。後のセッションでの理解度が非常に上がったと思います。タイミーでもESLintの独自ルールを作る際にASTに触れている箇所もあるので、そこの実装を思い出しながら説明を聞いていました。
TypeScriptの型システムを使ってコードジェネレーターを作成するところについては、実際にやってみないと分からない具体的な課題や実践的な知識も紹介され、コードジェネレータの作成にとても興味が湧きました。
ハードウェアを動かす TypeScript の世界
このセッションでは、ハードウェア開発の面白さに触れつつ、TypeScriptでハードを動かす際に考慮すべきことについて説明がありました。
普段Web開発ばかりしているので、日頃聞くことのないハードウェアの話が非常に興味深かったです。特に「考えることが多すぎる」と繰り返し言及されていましたが、やりたいことや予算に合わせたデバイスの選定、デバイスに応じた言語の選択や実行環境の選定、そして一度デバイスを選定して調達すると後から修正がしづらいといったハードウェア特有の難しさについての話が印象に残りました。ハードウェア開発の難しさと面白さの一端を垣間見ることができたかと思います。
この難しさを乗り越えることで、より多くのことが可能になると感じ、自分たちの仕事にもハードウェアを活用できる場面があるのではないかと想像しました。また、普段は無意識にソフトウェアの手段に制限していることを再認識し、TypeScriptでハードウェアのコードが書けることに驚きました。
実務でハードウェアを使うこと、実装することはまだ少しハードルが高く感じられますが、Webやソフトウェアに捉われない視点を持つという点では非常に刺激を受けたセッションでした。
Exploring type informed lint rules in Rust based linters
このセッションは、最近流行しているRust製のlinterが直面している問題と、Biomeのコミッターとして考えられている解決策についての発表でした。
具体的には、Oxcやdeno_lintなど他のRust製ツールとBiomeを比較しつつ、これらのRust製ツールがTypeScriptの型情報を用いたLintを行えないという問題に焦点が当てられていました。この問題について聞いたことはありましたが、その背景については知らなかったため、非常に勉強になりました。Linterの内部での仕組みについての話から、形情報を元にLintルールを作ることがなぜ難しいのか、それを解決する方法について理解できたように感じています。今のところタイミーの開発ではESLintが主流ですが、Biome・Oxc・deno_lintの比較は今後乗り換えを検討する時には参考にしたいと思いました。
結論としては、—isolatedDeclarationsを活用しつつ、Type Inferenceの実装を進めることになるとのことでした。簡単な道のりではないように感じられましたが、これからの進展に期待しながら注視したいと思います。
Prettier の未来を考える
このセッションでは、Prettierが今に至るまでの歴史的な経緯や、これからのPrettierの方向性について話がありました。
具体的には、ESLintがTypeScriptをサポートしていないため、追加のツールを入れる必要があることや、CIで全体に対してPrettierを適用するとフォーマットに時間がかかるといった問題が挙げられました。私も、過去にhuskyを使ってpushするたびにPrettierでformatをかける設定にしていたことがあったので、pushするたびにかかるformatが非常に重くストレスを感じた記憶が蘇りました。ESLint+Prettierの設定の複雑さの話についても、過去の苦い経験を思い出しながら話を聞いていました。
また、誰もPrettierを早くしようと思ったことがないという話には驚きました。BiomeやDenoのような高速に動作する競合ツールの台頭がPrettierの方針に影響を与えているところを見ると、やはり競合の出現が成長を促すこともあると実感しました。
タイミーでは今メインで開発を進めているプロジェクトでPrettier + ESLintを活用しています。Biomeへの全面的な移行という可能性もありますが、ESLintのルールを独自で作っているところもあるので、Prettierの今後の行く先を見守りたいなと思いました。
まとめ
今回はTSKaigiのセッションの内容をいくつか抜粋して紹介させていただきました。どのセッションも非常に興味深く、学びになるものでした。最後の懇親会では多くのエンジニアの方と交流させていただき、とても楽しかったです!
また来年もTSKaigiが開催されるとのことでしたので、来年もお会いしましょう!