こんにちは。タイミーでAndroid Chapter Leadをしているmurataです。
普段はAndroidコミュニティの運営やTech Lead的な動きをすることが多いのですが、今回はいつもの技術領域とは少し異なる視点を得たくて、今回のEngineering Management Conference Japan 2026(以下、EM Conf)に参加しました。
EM系のカンファレンスは初参加でしたが、新たな世界を見ることができた1日でした。
- 各セッションの「聞いたこと」は、私なりに理解し印象に残ったポイントの抜粋です。実際の講演内容と齟齬がある可能性があるためご了承ください。
印象に残ったセッション
冒険する組織のつくりかた
安斎 勇樹(Yuki Anzai)さんによる基調講演です。
「これまでのマネジメントは軍事的世界観で語られがちだったが、これからは“冒険的世界観”で組織づくりをする」という話が軸でした。
EM業に不慣れな自分でも理解しやすく、すぐに実践できそうな内容が多いセッションでした。朝イチから目が覚めるような学びがありました。
セッションで聞いたこと(抜粋)
- 危機感を煽るマネジメントは、いまの環境だと人が離れるだけになりやすい
- “冒険的”な組織は、外向きで、感情を重視する
- 「今すぐ改善できる、半径5mのもの」
- 目標のマネジメント
- 目標が機能しない背景に「納得がない」「内発的動機がない」「みんなでやる意味がない」がある
- 軍事的マネジメントは目標に対する視野狭窄をつくることだった
- SMARTだけでなく、ALIVEのような「取り組む側が前向きな意味を感じられる指標」も両立させる
- 会議のマネジメント
- 「何かいいアイデアないですか?」「FBないですか?」という問いは、発言を引き出しにくい
- 「この企画案、どこか1つ変えるとしたら?」「もしお客さんなら何点をつけますか?」のように具体で答えやすい問いにすると発言がすぐ飛び出す
- 興味のマネジメント
- 以前は「3年後のwill」を起点に目標を逆算しがちだったが、いまはwillが出てこないことも多い
- 「興味があるもの」「面白いと思っているもの」を聞いてキャリア支援する方が今に向いている
- 目標のマネジメント
学び・感想
- 目標設定は感覚で“SMARTっぽく”やっていましたが、ALIVE*1の観点は初耳だったので次から意識してやってみます
- 会議で「何かありますか?」を幾度となくやってしまっていたので、問いの設計を今日から変えます
- タイミーで取り入れているファイブフィンガー(手の本数で賛成度・懸念度を示すシンプルな意思表示の方法)は、この「問いかけを工夫して発言を引き出す」方向性と相性が良さそうだと感じました
「ストレッチゾーンに挑戦し続ける」ことって難しくないですか? メンバーの持続的成長を支えるEMの環境設計(ぎーにょさん)
「自分の目標ですらストレッチし続けるのは大変なのに、EMはメンバーにどのようにストレッチさせているのか?」という関心から、このセッションに飛び込みました。辛いですよね、目標設定。
セッションで聞いたこと(抜粋)
- 「ストレッチゾーンが無い」状態には、いくつかのパターンがある
- 今の自分に最適なチャレンジが分からない → 現状を分析する
- 途中で自然消滅しそう → 目標を立てる
- 外部要因で止まりそう → 実行を支援する
- EMが全部を背負うとボトルネックになるため、スケールに備えた“持続可能な仕組み”が重要
- 心理的ハードルを下げて変化を起こす施策として、ADRを用いて、コードベース全体に影響する提案と承認のプロセスをルール化する例が紹介されていた
学び・感想
- ADRの話は、以前導入した タイミーAndroidChapter式LADR と狙いが近く、方向性は間違っていなさそうだと勇気づけられました
- 一方で、紹介されていた取り組みは“施策の寄せ集め”ではなく、「なぜストレッチが難しいのか」を構造として捉え、分析したうえで仮説→検証で進めている点が強かったです
- 自分は点でhowを増やしがちなので、システム的に捉える筋力を身につけたいです
- 余談ですが、スライドの写真と登壇者の雰囲気に違いがあり印象に残りました(どちらも素敵でした!)
守る「だけ」の優しいEMを抜けて、事業とチームを両方見る視点を身につけた話(Mitsuiさん)
「チームを守る盾」と「成果を出す槍」を状況に応じて使い分ける、実体験に根ざした話で、リアリティが強かったです。
セッションで聞いたこと(抜粋)
- 立て直しの局面では、まずチームを外圧から守りきることが重要
- ただし、それだけを絶対視すると、求められる事業の成果とズレる局面が出てくる
- EMは、事業とチームの両方を見て判断するための軸と、実行の引き出しが求められる
学び・感想
- mitsuiさんが「理想のEM像」として信じていた以下のポイントは、たしかに大事(で、私の理想ともほぼ一致しています)。
- サーバントリーダーシップ
- ピープルマネジメントの徹底
- ボトムアップの組織
- ただし“常にそれが正”ではなく、最終的には事業貢献・企業価値への影響を最大化するのが目的。
- その目的に照らして、状況で使い分ける意思とスキルが必要なのだ、と腹落ちしました
「開発生産性」ではなく「事業生産性」こそが本質(江副 廉人さん)
セッションで聞いたこと(抜粋)
- EMとして「事業生産性」を意識し、投下資本に対する利益率(ROIC)の観点から“稼ぐ力”を最大化していくことが重要
- 企業価値の算出方法としてDCF法*2がある
学び・感想
- 自分の中で「ROICを意識する重要性」を理解できました
- ただ、現実の会話に落とす難しさも同時に強く感じました
- 各変数をそもそも数値化するためのスキルが必要
- EMになると、こういった数字が“即答できて当たり前”なのか
- それとも、会社として“取りに行けば取れる”状態にしておくのが前提なのか
- 後者の観点で、全社としてROICや関連指標がパッと出るようにイネイブリングされると、指標としての活用が進み、事業生産性への意識も広まりやすいのではないかと無邪気に感じました
ブースで印象に残ったこと(DRESS CODE様)

DRESS CODE様のブースでは、写真のように「EMの取り組みとして無くなっていくもの」と「今後期待されるもの」について、たくさんの付箋が貼られていました。
一見「え、そうなの?」と思うものもあり、興味深かったです。特に目に留まったのは、「無くなっていくもの」にあった以下の2点です。
- 「睡眠時間!!」
- エンジニアのAI活用によりアウトプットが増え、結果として仕事量が増えるため、という文脈
- 「定量的な評価」
- 今後はAIがデータを収集し、定量評価を代替していくため、という文脈
- 不要になるのかと思いきや、役割がスライドしたということですね
さいごに
普段参加する技術系カンファレンスとは見える景色が全く違い、とても面白かったです。
特に印象に残ったのは、テクニックの話に入る前に「そもそも何を大事にするのか」がどのセッションでもきちんと語られていたことでした。
学んだら実践ということで、まずは半径5mの範囲で、問いの立て方や目標の置き方を変えるところから始めます。
「知った」で終わらせず、仕事の中で試して定着させ、“増殖”させていきます!
*1:目標の精度を高めるSMARTに対し、実行者の『感情・価値観・継続性』に焦点を当てた目標設定フレームワーク。 参照:組織を活性化する目標設定:SMARTからALIVEへ ビズユーコンサルティング
*2:将来期待されるキャッシュフローを、リスクを考慮した割引率で現在の価値に換算して企業価値を算出する手法。 参照:【完全版】DCF法の計算手順や欠点を基礎からわかりやすく図解 株式会社STRコンサルティング