はい、亀井です。 yykamei という名前でインターネットではやらせてもらっています。所属はタイミーです。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2026(RSGT2026)に、ボランティアスタッフとして参加しました。
今年は会場が変わったこともあり、運営側としても新たな挑戦が多い年でした。今回は「運営としての学び」と、セッションや対話から得られた「実践知としての学び」という二つの視点から、今年のRSGTを振り返ります。
ボランティアスタッフとして見た「現場」と「適応」
今年の大きなトピックは、やはり会場が変わったことでした。これによって、長年蓄積されてきた「あの会場ならこう動けばいい」という特定の場所に依存したノウハウが使えなくなりました。
しかし、具体的な手順書がリセットされた状態でも、スタッフそれぞれが「このイベントにおいて自分は何をやるべきか」という本質を理解していたため、阿吽の呼吸でなんとかなったように思います。自己組織的なコミュニティーですね。終わった後にスタッフでこのRSGT2026について全員が一言を述べるのですが、皆さん、それぞれの視点からいろいろな学びやフィードバックを持ち込んでくださったり、「そもそも今回はどのような心持ちで望んでいたか」という話をしてくれたりして、カンファレンスのスタッフとしてどのような価値を出すべきかということについてハッとさせられました。
今回の私のスタンスは「無理にがんばらない」ということでしたが、終わってみるとそこそこの歩数を稼いでしまったので、目標達成はできなかったようです。しかし、それだけ人との会話を楽しめたのかなと思います。
「空調」と「導線」
会場の空調管理が難しかったです。結果として「寒い」という意見がマジョリティを占めてしまったように感じます。RSGTは例年1月の最も寒い時期に開催されるため、基本的には「高めの温度設定」をデフォルトにしておくのが正解だという明確な学びを得ました。これは来年への重要な引継ぎ事項かもしれないですね。とはいっても、空調管理は他のスタッフがやってくれていたので、まずは空調機器の操作方法を覚えるところからが来年のスタートになりそうです。
また、会場レイアウトについても気づきがありました。Hall AとHall Bは基本的には同じ作りのはずなのですが、机の配置の影響で、Hall Aは両サイドに廊下的スペース(通路)がなく、人の移動がしづらい状態になっていました。一方でHall Bは余裕があり、スムーズな回遊ができていました。来年はHall AもHall Bのような配置をするといいのだろうなと思っております。
壁を取り払う
今回の会場であるベルサール羽田空港は、部屋と部屋をつなげるなど、レイアウトに柔軟性があります。また、部屋の数も多いので、今回はスポンサーブースとして部屋を二つ借り、その間の壁をなくしてつなげていました。
これは大成功だったようでして、スポンサーの方からも「参加者が回遊できてよい」というポジティブなフィードバックがあったようです。
「情報保障」と能動的なキャッチアップ
RSGTは昨年同様、今年も情報保障にかなり力を入れていました。しかし、ボランティアスタッフとして参加していながら、その具体的な仕組みや運用ノウハウについて、私自身が意外と知らないことに気づかされました。
運営マニュアルとして手取り足取り教えられるわけではないので、スタッフ自身が積極的に知ろうと動かないと、その裏側にある努力や仕組みを知ることができません。
これってオンボーディングのない会社に入社したときと同じですよね。来年は、この情報保障の領域についても、もっと能動的にキャッチアップしていこうと心に決めました。
セッションを見た感想
運営の合間に参加したセッションと、部屋付きとして参加したセッションについて書いてみます。
改めてスクラムについての学び
ryuzeeさんのキーノートでのデイリースクラム Deep Diveのセッションに部屋付きとして入りました。デイリースクラムは単なる報告会ではなく、透明性を確保し、検査と適応を行うためのイベントです、と。「スプリントゴール達成が唯一の目的」であり、そのための検査である、といったことをおっしゃっていたように思います。特に印象的だったのが、「タイムボックスの延長を許すのは『割れ窓理論』と同じである」という指摘です。一度時間を守らなくなると、他の規律もなし崩し的に守らなくなるとのことでした。「PBI単位で、上から順番に確認する」という具体的なアドバイスや、スプリントゴールチェックインという手法は、すぐに現場で試せる知見でした。
また、Yohさんのよくわからないことが多い場合の計画づくりのコツにも部屋付きで入りました。「わからないことはわからない」と認め、細かく計画しすぎず、「わからないことを見える化」するために頻繁に計画を見直す、といったことをおっしゃっていたような気がします。面白いのは、「わからないことリスト」的なものを作成しておく、という点ですかね。これは、Kent Beckが『Tidy First?』で言っていた「お楽しみリスト」みたいなものかもしれない、と勝手ながら思いました。リストに含めておく、という行為がいったん忘れることができるのでいいですよね。
とみたさん・田口さんのSprint Reviewで、ビジネスと開発の「当たり前」を同期する、こちらも部屋付きで聞かせていただきました。レビューが盛り上がらない根本原因は「学習の場になっていない」ことにあるという指摘には深く頷きました。ステークホルダーには「アジャイル」という用語を使わずに対話するという話があったのですが、すごくいい話だなと思いました。
複雑さと向き合う組織づくり
組織論の観点では、長沢さんのEBM実践のカタ —— 実践とゴールと計測を結びつけるアジャイルのありたい姿へが印象に残っています。「開発作業ではなく実験をするべき」という言葉。そして、リーダーは戦略的ゴールを示し、実践者が戦術的ゴールを定めるという構造は、健全な自律組織の条件だと感じます。
森さんの「私の要求最優先!あなた後回し」そんな対立を超えてビジネス、開発、顧客が本当に欲しかったものを全両立するプロダクト組織の作り方での「循環構造型トレードオフ(AをやるとBがだめになり、BをやるとAがだめになる)」という話も、プロダクト開発のリアル!という感じでしたね。ビジネス、開発、顧客の間で揺れ動く中で、「長期的な有害」をマネジメントするという発想はなかったなーと思いました。今まで気にならなかったものが気になり始めたら、それは工夫が始まっている証拠だという言葉には勇気づけられました。
およべさんのAI時代のアジャイルチームを目指して - "スクラム"というコンフォートゾーンからの脱却-では、組織を「チームのような密度」で捉え、ロールを動的にしていくという、これからの組織のあり方が示唆されていました。振り返ってみると、これはDay3の漆原さんのクロージングキーノートにつながっていたな、という気がします。
人、モチベーション、そして物語
Day2のいくおさんの自己管理型チームの一員となるためのセルフマネジメント:モチベーション編、こちらはたまたま私のフリーな時間が重なったので話を聞くことができました。「自己管理型チームと個人のセルフマネジメント 〜モチベーション編〜」というタイトルです。ERG理論(成長・関係・存在)とかABC理論(出来事・信念・結果)といった理論を紹介しつつ、ご自身の経験をもとにした発表で、「え、いくおさん、そんなことを思っていたんだ」という感じです。その中でも「自分はいつもメンバーに恵まれている」と言っていたのですが、シンプルにこれを言えるマネージャーってすごいな、と思いますよね。
ちんもさんの田舎で20年スクラム(後編):一個人が企業で長期戦アジャイルに挑む意味、こちらは部屋付きで入っていました。急遽、部屋付きを一人でやることになってバタバタしそうだったのですが、それでも内容は結構印象に残っています。私の印象では一言で言えばチェンジエージェントの話です。しかし、チェンジエージェントといってもそれを20年やっているわけですよ。言葉の重みが違いますよね。現場を変えようとする人々の背中を押すような素晴らしい内容でした。
最後に
セッションだけでなく、廊下での雑談もRSGTの醍醐味です。たぶんインターネットで公開できないような話も聞けたと思います。
ボランティアスタッフの打ち上げ的な飲み会で、永瀬さんがおすすめしてくれたものをメモしたのを見返すと、「セサミストリート」「スンスン」と書いてありました。
会場変更という大きな変化の中で、ボランティアスタッフとして「適応」を実践できたこと。そして、セッションを通じてスクラムの「基本」と「本質」に立ち返れたこと。
今年のRSGTは、運営という立場だからこそ得られた「組織としての動き方」の学びと、コンテンツからの学びがリンクする、非常に濃密な時間でした。
ここで得た熱量と知見を、明日からの現場、そして来年のRSGTにつなげていきたいと思います。