こんにちは、タイミー取締役 事業統括兼CPOのShunです。Timee Product Advent Calendar 2025の12/14担当ということで、最近意識しているテーマ「シングルスレッドリーダー」について書きたいと思います。
まず前提として、一定の規模を超えた事業がさらに非連続な成長を遂げるためには(いわゆるSカーブの成長曲線の再現)、往々にして相応の大きな挑戦が必要だと思っています。そのためには、強力なアイデアを形にし、提供価値を進化させ、販促や営業の型をつくり、それをスケールさせるオペレーションを構築しなければなりません。つまり既存のやり方の地続きではない「変革」が必要です。
しかし、変革に着手するのは容易ではありません。なぜなら、一人ひとりが日々の仕事に忙殺されてしまっているからです。顧客対応も、開発も、運用も止められない。止めた瞬間に組織や個々人の目標達成は危うくなり、売上や各種KPIに影響を及ぼす可能性もあります。
そう、みんな、すでに忙しい。けれども変革には地続きでない追加の努力が必要です。変革は、余裕ができたときに取り組む追加タスクではなく、日常業務そのものを変えるような力学が働かなければ生まれません。新しい価値や仕組み、意思決定、そして組織の再編まで求められる。では、誰がそれをできるのでしょうか?
推進力を設計するという発想:シングルスレッドリーダーとは
ここで役に立つと僕が信じているのが、シングルスレッドリーダーの考え方です。シングルスレッドリーダーとは、「特定の事業領域の成功に必要な権限とリソースを与えられた、兼任ではない専任のリーダー」を指す、Amazonで提唱された考え方です。僕の前職であるGoogleにおいても、DRI(Directly Responsible Individual)という名称でほぼ同様に運用されていました。日本人としてはシングルスレッドの方が言いやすいので、僕はそちらの呼び方を使っています。
僕はこれを、単なる「責任者を置く」話だとは捉えていません。シングルスレッドとは、開始点と終着点があるプロジェクト管理の話ではなく、「推進力の設計」の話だと思っています。
この仕組みが解決するのは、「スキル・経験がある人ほど兼務状態になりがち」問題です。「話が早いから」「結果が期待できるから」といった理由から、短期的には合理的な側面もある一方で、兼務状態の膨張は、言わずもがな以下のような弊害を生むリスクを抱えています。
- 当事者の集中が分断される(思考やアクションが積み上がらない)
- 優先順位が毎回揺れる(何かを決めるまでが長い)
- 責任が薄まる(最後に腹を括る点が曖昧になる)
その結果、複数の領域それぞれの雑務に追われて推進力が弱まり、全体的なアウトカムにも影響してしまうと思っています。
それゆえ、真逆のアプローチで、スキル・経験が豊富な人こそ思い切って「専任である一つのコトに向き合ってもらう」。それだけで、一人ひとりの目線も、スピードも、アウトプットの質も段違いで変わるというのを目の前で幾度となく見てきています。
タイミーでの実装
タイミーでは、過去1年間で、既存事業とは別に実験的に 6つのシングルスレッド組織をつくり、それぞれに事業オーナーを立てて推進してきました。
シングルスレッドリーダーたちは、事業の責任者としてバーティカルに特定の領域を管掌し、責任と意思決定権限をダイレクトに持ちます。もし任用時点でそれ以外の事業テーマも管掌していた場合には、任用のタイミングでそれらをすべて手放してもらいます(その領域は別の専任オーナーや既存の事業ラインに委譲し、推進力が分散しない構造に切り替えられるよう、最大限努力します)。多くのケースで戦略策定機能、企画・推進機能、そして営業機能はこのシングルスレッドリーダーの組織に属して、「管掌する事業」にフルコミットでフォーカスします。
一方で、プロダクトやマーケティングはシングルスレッドリーダーの管掌下には置かず、それぞれ独立した本部として残しています。その上で、ホリゾンタルにそれぞれの事業に対して担当を配置していきます。これはよく取られている形式だと思いますが、これらの機能を一箇所に固めた方が、採用・育成・型化・横展開の生産性が高くなることが大きな理由です。
この組み合わせはいわゆるメッシュ構造とも言えますが、古くからあるマトリックス組織との違いは何でしょうか。それは、シングルスレッドリーダーの組織においては「責任の一本化」と「専任性の強制力」が決定的に違うと思っています。マトリックスは事業と機能を掛け合わせる強力な概念ですが、構造上どうしても“責任の曖昧さ”が残り、責任が2軸に分散しやすく、意思決定も調整コストが高くなりがちです。シングルスレッドリーダーの組織においては、この曖昧さを一掃し、責任とリソースと意思決定を1本に束ねるように設計しています。マトリックス型組織の弱点をアップデートした形であり、専任化によって“推進力の失血”を防ぐ仕組みとも言えます。
組織デザインは常にアップデートし続けるもの
もちろん、タイミーにおいても組織は日々形を変えています。シンプルなシングルスレッド体制が適する場面もあれば、複数の機能が密に連携した方が早いケースもある。成長フェーズや事業特性によって、求められる“最適な推進構造”は毎月のように変わります。だからこそ、組織デザインは一度つくって終わりではなく、事業の変化速度に合わせて絶えず再構築する「動的なシステム」であるべきだと思っています。
スポットワークというまだまだ進化を続ける業界だからこそ、戦略・戦術・組織あらゆる領域において「変革」に取り組み、事業の成長にあわせて組織も柔軟に形を変えながら、ワーカーの人生の可能性を広げるインフラづくりに真正面から取り組んでいきたいと思います。
タイミーのこういった様々な挑戦にご興味のある方、全方位で採用活動中ですので、ぜひお話ししましょう!