こんにちは、タイミーのデータ統括部でデータサイエンティストを担当している小栗です。
データ統括部は、組織内におけるデータ利活用を促進するため、データ分析、予測モデル構築、データ基盤構築などの業務に日々取り組んでいます。
今回、部署内で「心理的安全性」に関する勉強会を開催しました。
この記事では、勉強会の内容をもとにして「心理的安全性」について解説したいと思います。
心理的安全性とはなにか
「心理的安全性」とは「アイデア・質問・懸念・間違いを話すことで、罰せられたり、辱められたりしないという信条のこと」を指します。
もう少し噛み砕くと「アイデアや意見を言っても受け入れられ、評価される環境」と表現できます。
この概念を提唱したのはハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモンドソン博士です。
彼女が行なった病院の医療ミスに関する研究が、心理的安全性の概念のベースになりました [1]。
研究の結果、優秀な医療チームのスタッフは日頃から小さなミスや懸念点を率直に話し合っており、医療ミスが少ないことが分かりました。
その一方で、優秀でない医療チームでは、スタッフは日頃のミスや懸念点を報告せず、医療ミスが発生していることに気づきました。
この優秀な医療チームが持つ風土に、彼女は「心理的安全性」と名前をつけました。
その後、Googleの研究チームが「心理的安全性が高いチームはパフォーマンスが高い」という研究結果を発表すると、心理的安全性の知名度は格段に向上しました。
現在では、組織にもっとも必要な要素であると広く認知されていると思います。
心理的安全性が低い組織に存在する4つのリスク
心理的安全性について、もう少し解像度を上げて解説してみます。
エドモンドソン博士は、心理的安全性が低い組織には対人関係における4つのリスクが存在するとしています。
◯◯だと思われたくない | なので… |
---|---|
無知 | 必要なことでも質問・相談ができない |
無能 | 自分の考えが言えない、ミスを隠す |
邪魔 | 必要でも助けを求めず、不十分な仕事で妥協する |
否定的 | 素直に意見を言えず、議論ができない |
心理的安全性が低い組織では、これら4つのリスクの存在により、メンバーが恐怖を抱いてしまい表の右側の行動につながります。
その結果、組織内のコミュニケーションが不足したり、アイデアが出なかったりと、組織の生産性が下がってしまうと考えられます。
心理的安全性を高めるメリット
次に、心理的安全性を高めるとどんな効果があるのか、エドモンドソン博士の著書で紹介されていた研究をもとに見ていきます [1]。
組織学習が促される
メリットの一つに、組織学習が促進される点が挙げられます。
病院の集中治療室を対象に行われた研究では、心理的安全性が高いチームでは「知識の共有」などのチームベースの学習が活発に行われていました。そして、チームベースの学習は手術の成功率と関連があることが示されています [2]。
Googleの研究チームが行った研究では、Google社内においてチームの効果性にもっとも影響を与える因子は心理的安全性だと結論づけられています [3]。
そして、心理的安全性の高いチームのメンバーには以下のような特徴があることを報告しています。
心理的安全性が高い組織では組織学習が促進され、組織と個人が高いパフォーマンスを発揮することができる可能性があります。
多様なメンバーのポテンシャルが発揮される
別のメリットとして、多様なメンバーのポテンシャルを引き出すことができる点が挙げられます。
多様性が尊重され、かつ心理的安全性が高い組織では、メンバーのパフォーマンスが高くなる傾向があることが研究で明らかにされています [4]。
この傾向は、組織内のマジョリティに属するメンバーより、マイノリティに属するメンバーにより強くみられました。
これは、心理的安全性はマイノリティに属するメンバーにとって特に重要なものであることを示唆しています。
別の研究では、メンバーが持つ専門知識の多様性が高いチームと、画一的なメンバーを集めたチームの比較を行なっています [5]。
研究の結果、専門知識の多様性が高いチームは、心理的安全性が高い場合は同条件の画一的なチームよりパフォーマンスが高くなる傾向があり、逆に心理的安全性が低いと画一的なチームよりパフォーマンスが低くなる傾向があることがわかりました。
多様性を尊重する組織においては、心理的安全性も併せて高めていくことで、各メンバーが高いパフォーマンスを発揮する土壌をつくることができそうです。
心理的安全性の落とし穴
一方で、心理的安全性をただ高めればいいというわけではなさそうです。
よくある落とし穴は、心理的安全性を高める努力をした結果、いわゆる「ぬるい職場」になってしまうことだと思います。
エドモンドソン博士は「心理的安全性は、ただ親切にすることでも、パフォーマンス目標を下げることでもなく、その逆である」と述べています [6]。
そして、「心理的安全性」と「目標達成に対する責任感」どちらも高い状態である”Learning zone”を目指すべきとしています。
心理的安全性を高めるだけに注力するのではなく、他の要素にも着目して組織の生産性を高めていくことが重要そうです。
心理的安全性を高める方法
次に、心理的安全性を高める方法について考えてみます。
心理的安全性を高める4つの因子
日本国内で心理的安全性を広める活動をされている石井遼介さんは、心理的安全性の高いチームをつくるためには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が重要だとしています [7]。
そして、それぞれの因子を満たすために必要なアクションを提唱しています。
心理的安全性を高める因子 | 因子を満たすアクション例 |
---|---|
話しやすさ | 意見をもらったら真っ先に「ありがとう」と伝える |
助け合い | 積極的に相談する、相談に乗る |
挑戦 | 間違うことは悪くない、そこから学ぶことが重要だと伝える |
新奇歓迎 | 違いを良い悪いではなく、ただ違いとして認める |
上の表ではそれぞれの因子とアクション例をまとめていますが、勉強会ではもう少し多くのアクションを紹介しました。
気になる方は、石井さんの著書を読んでみてください。
タイミーのデータ統括部で実際に取り組んだこと
タイミーのデータ統括部では、心理的安全性を高める第一歩として今回の勉強会を開催しました。
(とは言っても、心理的安全性について理解が深いメンバーがほとんどなので、「知識の再確認」といった感じでしたが…笑)
勉強会の後半では、心理的安全性をテーマとしたグループワークに取り組みました。
グループワークでは「心理的安全性を下げる対応をしてしまいがちな状況において、心理的安全性を高めつつ効果的に問題解決に近づくにはどういった行動をすればいいか」というテーマで議論を行いました。
例えば、以下のような状況における対応を参加者で議論する、といったものです。
とある問題に対する解決策についてチームで議論しているとき、メンバーの一人がある解決策を提案しました。
しかし、あなたのこれまでの経験や視点から考えると、その解決策は筋が悪いように思えます。
こんなとき、どう対応するのが良いでしょうか?
参加者からは、以下のような意見が挙がりました。
- 筋が悪かったとしても、「意見してくれたこと」に対して感謝を伝える
- メンバーが提案した解決策の軌道修正を一緒にやる
- 筋が悪いとはそもそも捉えず、メンバーがその解決策に至った思考プロセスを掘り下げて、認識や思考の違いを理解する
唯一絶対の正解がない問題をテーマに議論することで、自分一人では思いつかない対応や着眼点などが具体化され、有意義な時間になったと感じています。
勉強会やグループワークは地道ではありますが、大きな手間がかからないので取り組みやすいですし、心理的安全性について考えるキッカケになります。
組織の心理的安全性を高める手段のひとつとしておすすめです。
さいごに
近年、心理的安全性は組織にとって重要だと広く認められるようになりました。
しかし、心理的安全性の担保された組織をつくることは実際には想像以上に大変です。
タイミーのデータ統括部は心理的安全性が高い環境だと私は感じていますが、メンバーがどんどん増えていくフェーズを迎えていることもあり、心理的安全性をより一層意識し、高いレベルで担保できるよう努力したいと考えています。
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